- 発行日 :
- 自治体名 : 千葉県大多喜町
- 広報紙名 : 広報おおたき 2025年12月号(NO.687)
「NPO法人自殺防止ネットワーク風」代表を務める篠原 鋭一先生が、人生を楽しくするレシピをご紹介します。
■〃自分が変われば周囲の目も変わる〃
悩みを聞いてほしいとやって来た高校二年生のM子さんが、開口一番言いました。
「住職さん、私の格好見て本当はびっくりしたんでしょう?髪は金色だし、お化粧しているし、マニキュア、イヤリング、指輪、派手な洋服…。とても高校生には見えない、そう思ってるんでしょう?顔に書いてあるもん。ウッフフ」
私は正直な所少々とまどいながら問いかけます。
「ところで悩みごとはなんですか?」
M子さんの顔から笑みが消えました。
「友達ができません。いいえ、できるんですけど、長続きしないんです。はじめは私といると楽しいとかおもしろいとか言ってくれるんだけど、いつのまにか逃げていってしまう。私はなんにも変わっていないんだけど、誰もが私を嫌いになっちゃうんです。このままだと、いつ迄たっても友人ができません。私のどこが悪いんでしょうか?」
若者らしい悩みです。
「なるほど…。ところでM子さん、どうすれば友達と長続きできるかのヒントは、今あなたが言った言葉の中にありますよ」
「えっ、私の言った言葉に…?」
「そうです。M子さん、『私はなんにも変わっていないのに』って言ったよね。そこなんだよ。結論を言うとね、あなたは変わらないから、みんな離れていくんですよ。あなたは〃みんな、私の方を向いてよ。私のそばにいてよ〃って自分中心に考えているでしょう。つまり、いつも頭の中にあるのは〃私のために〃ってこと。そうじゃなくて、〃友人のためにできることをしてあげたい〃と考え直して、あなたが変わったとき、本当の友人関係が成立するのです。
人間はね、よく勘違いするのですね。〃あの人はどうして私の方を向いてくれないんだろう〃って思うんだけど、実は目を向けさせないようにしているのは、自分だということに気が付いていない。自分が変われば誰もが自分の方を向いてくれるのに、それに気付かない。ここなんです。M子さん、まずあなたが変わってごらんなさい。そうすれば、あなたを見る周囲の目も変わり、素晴らしい友達ができるから」
M子さんの表情が笑顔に変わり、こう語りました。
「たしかに私、みんなから注目されたいと思っていました。納得しました。自分を変えてみます。こんなキンキラキンの恰好止めちゃおうかな」
「止めなくてもいいんじゃない。今は青春してるんだもんね。一生続くことはない。今は思う存分やってごらんなさい」
「ウフフ、何だか胸がスーッとしちゃった」
白い歯をのぞかせて笑うM子さん。まだあどけない少女そのものです。
篠原 鋭一(えいいち) 氏
1944年兵庫県生まれ。駒澤大学仏教学部卒業。
千葉県成田市曹洞宗長寿院住職。曹洞宗総合研究センター講師。
同宗千葉県宗務所長、人権啓発相談員等を歴任。
「NPO法人自殺防止ネットワーク風」代表。
公立の小学校・中学校・高等学校を巡り「いのちを見つめる」課外授業を続けている。
「生きている間にお寺へ」と寺院を開放。
「少年院」「拘置所」で特殊詐欺犯罪の結末を説き続けている。
