くらし 「動く自由」を応援する、インクルーシブ運動場。(1)

―自由に体を動かすことで広がる、「心のバリアフリー」。―

■しぶや区ニュース×渋谷のラジオ 渋谷のラジオで出張インタビュー
誰もが運動や活動を楽しめるまちづくりを目指す「インクルーシブ運動場」プロジェクトに携わるお二人に、現在の活動内容や今後の展望などを伺いました。

・インクルーシブ運動場 代表 積田綾子(つみたあやこ)さん
「インクルーシブな渋谷のまちを、一緒につくっていけたらうれしいです。」
・インクルーシブ運動場 メンバー 堀川徹朗(ほりかわてつろう)さん
「誰でも安心して参加できます。興味のある人はぜひ、声を掛けてください!」

◆楽しく動いて、助け合いながら垣根を越える
◇自己紹介をお願いします。
積田:インクルーシブ運動場の代表を務める積田綾子です。私は、障がいによって日常の活動や本当にやりたいことが制限されてしまう人たちを支えたいという思いから医師になり、現在は小児科専門医・リハビリ科医として、身体・知的・精神の障がいを持つ人の診療に携わっています。

堀川:インクルーシブ運動場メンバーの堀川徹朗です。私は普段、区の施設の管理業務を行なっています。

◇「インクルーシブ運動場」を立ち上げたきっかけを教えてください。
積田:医師として活動する中で、投薬やカウンセリングだけでなく、遊びや運動を取り入れた治療方法に可能性を感じるようになり、その考えを深めるためにアメリカの療育施設で研修を受けるなど、活動の幅を広げてきました。こうした医療現場での経験を通じて、「誰もが臆することなく自由に動けるまちをつくりたい」と考えるようになり、「ササハタハツまちづくりフューチャーセッション(以下「フューチャーセッション」)」というワークショップへの参加を経て、令和2(2020)年に「インクルーシブ運動場」を立ち上げました。

堀川:私は以前、知的障がいのある子どもたちのための水泳教室の運営を6年間担当していました。運営に携わる中で、「障がいのある人がさまざまな活動を楽しめる場所をつくりたい」と考えていたところ、「フューチャーセッション」で積田さんと出会い、「インクルーシブ運動場」の立ち上げに携わることとなりました。

積田:「インクルーシブ※」と聞くと、「みんな一緒」というイメージを持つ人が多いかもしれませんが、私たちは皆さんそれぞれのペースを大切にしています。年齢や障がいの有無を理由に決めつけず、誰もが気兼ねなく、やりたいことを思い切り楽しめるような場所をつくりたいと思っています。

※障がいの有無、性別、国籍、年齢などにかかわらず、全ての人が分け隔てなく受け入れられ、共に尊重し合いながら共生する社会を目指す考え方

◇「インクルーシブ運動場」では、どのような活動を行なっているのでしょうか?
積田:「インクルーシブ運動場」の活動には、四つの柱があります。一つ目は、車いす体験です。子どもたちに車いすを身近に感じてもらい、未来の渋谷を車いす利用者に優しいまちにすることを目指しています。二つ目は、ポニーライド(乗馬体験)です。公益財団法人ハーモニィセンターの協力の下、障がい者や高齢者など、サポートが必要な人も乗馬や動物との触れ合いを気軽に楽しめる機会を提供しています。三つ目は、プランター活動です。郊外の農園でハーブを栽培し、収穫・加工したものをマルシェなどで販売したり、玉川上水旧水路緑道沿いに車いすでも利用できるプランターを設置したりして、誰でも自由にアクセスできる小さな菜園を造っています。そして四つ目は、「遊びと研究」です。楽しくて思わず体を動かしたくなるような運動になるように、全ての活動に遊びの要素を取り入れています。また、活動の中で心拍数や生体反応の測定などを併せて行うなど、一方的な支援ではなく、医学的な視点も持って活動をしていきたいと考えています。

堀川:活動は月に1回程度で、四つの柱に沿って区内外で多様なイベントを実施しています。理学療法士や作業療法士、特別支援学校教諭、ヨガインストラクターなど、さまざまなジャンルの専門家が活動をサポートしていますので、障がいの有無、性別、国籍、年齢などにかかわらず、誰でも参加することができます。「インクルーシブ運動場」は、同じ空間でいろいろな人が関わって、互いに助け合いながら体を動かし、楽しい時間を共有できる場所です。