スポーツ 東京2025デフリンピックに挑む卓球日本代表。(1)
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- 発行日 :
- 自治体名 : 東京都渋谷区
- 広報紙名 : しぶや区ニュース 令和7年(2025年)10月1日号
―応援を力に、世界への挑戦を卓球の聖地・東京体育館で。―
■東京2025デフリンピック
デフリンピックは、英語で「耳がきこえない」という意味の「デフ(Deaf)」という言葉と「オリンピック」を組み合わせた造語で、聴覚に障がいのあるアスリート(デフアスリート)による、4年に一度の国際的なスポーツ大会です。第1回は大正13(1924)年にフランス・パリで開催され、今大会は、日本で初めて開催されるとともに、100周年の節目を迎える記念すべき大会となります。渋谷区内では、開会式・閉会式および卓球競技が東京体育館で行われ、メダルをかけた熱戦が期待されています。
大会名称:第25回 夏季デフリンピック競技大会 東京2025
大会期間:11月15日(土)~26日(水)(12日間)
会場:東京都、福島県、静岡県
※試合観戦は無料です。
■しぶや区ニュース×渋谷のラジオ 渋谷のラジオで出張インタビュー
11月に開催される、きこえない·きこえにくい人のためのオリンピック「東京2025デフリンピック」に出場する卓球日本代表の皆さんに、デフ卓球の魅力や大会への思いを伺いました。
・東京2025デフリンピック卓球男子日本代表 亀澤史憲(かめざわふみのり)さん
「デフリンピックをきっかけに、聴覚障がいへの理解をもっと広めていきたいです。」
・東京2025デフリンピック卓球女子日本代表 山田瑞恵(やまだみずえ)さん
「皆さんの応援が、私たちの大きな力になります。東京体育館で会いましょう!」
・東京2025デフリンピック卓球男子日本代表 灘光晋太郎(なだみつしんたろう)さん
「卓球の聖地・東京体育館で皆さんの記憶に残る試合をしたいです。」
・東京2025デフリンピック卓球女子日本代表 亀澤理穂(かめざわりほ)さん
「5回目の挑戦となる今大会こそ、金メダルを獲得したいです!」
◆デフリンピックを目指して、積み重ねた練習の日々
◇自己紹介をお願いします。
亀澤(史):東京2025デフリンピック卓球男子日本代表の亀澤史憲です。デフリンピックは今回3回目の出場で、令和4(2022)年にブラジルで開催された前回大会では、男子団体で銅メダルを獲得しました。
灘光:同じく卓球男子日本代表の灘光晋太郎です。前回大会では私も亀澤史憲さんと共に、男子団体で銅メダルを獲得しました。昨年は、第46回全国ろうあ者卓球選手権大会の男子一般で優勝しました。
亀澤(理):東京2025デフリンピック卓球女子日本代表の亀澤理穂です。今回が5回目のデフリンピックになります。前回大会では、女子団体で銀メダル、女子ダブルスで銅メダルを獲得しました。
山田:同じく卓球女子日本代表の山田瑞恵です。デフリンピックにはこれまで3回出場していて、前回大会では亀澤理穂さんと共に、女子団体で銀メダル、女子ダブルスで銅メダルを獲得しました。
◇卓球との出会いや、本格的に卓球に取り組むようになったきっかけを教えてください。
山田:母と姉が卓球をしていたこともあり、中学校で卓球部に入部しました。平成24(2012)年の第2回世界ろう者卓球選手権大会を観戦した際、迫力あるプレーを見て、「私も世界大会に出たい」という思いを抱き、デフリンピックを目指すようになりました。
亀澤(理):両親と兄の影響で卓球を始めました。中学1年生の時、元世界チャンピオンの女子選手による講演会でデフリンピックの存在を知り、その後、さまざまな大会に出る中で本気でデフリンピックを目指すようになりました。
灘光:小学生の頃はテニスをしていましたが、中学生になって入学したろう学校にはテニス部がなかったため、卓球部に入ったのがきっかけです。中学1年生の時、ろう学校の大会に初出場し、いきなり優勝したことで、「卓球に向いているかもしれない」と思い、本格的に取り組むようになりました。
亀澤(史):私も灘光さんと同じく、中学校で卓球部に入ったことがきっかけです。続けているうちに、聴覚障がい者の大会だけでなく、健聴者の大会でも勝ちたいという思いが強くなり、次第に卓球にのめり込んでいきました。
◆音のない世界で戦うからこそ生まれる戦略
◇デフ卓球の特徴や魅力を教えてください。
山田:競技中は静かな印象があるかもしれませんが、実際は会場が一体となって盛り上がる場面がたくさんあります。また、言葉ではなく、手話やハンドサインを使って作戦を立てたり、視線を交わして気持ちを通わせたりと、選手同士、より一体となってプレーするのもデフ卓球の特徴であり、魅力でもあります。
亀澤(史):デフ卓球ならではの戦術も見どころです。卓球は、ボールに回転をかけて打つ競技で、健聴者の場合はボールがラケットに当たる音で回転量を判断することができます。一方、デフ卓球では音ではなく視覚のみで回転量を判断する必要があるため、工夫を凝らした戦術が求められます。例えば、力んだ表情を見せたり、床を足で強く踏んで振動を伝えたりすることで、実際より多くの回転がかかっているように錯覚させるテクニックが使われています。
◇デフリンピックは、皆さんにとってどのような存在ですか?
灘光:デフアスリートにとっては、最終目標ともいえる大会です。私は、中学校と高校の同級生でデフ水泳日本代表の茨隆太郎選手をきっかけに、意識するようになりました。中学3年生の時に、茨選手がデフリンピックに出場することを知り、衝撃を受けると同時に「自分も出たい」と強く思うようになりました。今回が2回目の出場で、再びこの舞台に立てることをとてもうれしく思っています。
亀澤(理):私にとってデフリンピックは、人生の財産といえるほど大切な存在です。これまでの大会を通じて、たくさんの人と出会い、勝って喜んだり、負けて涙を流したりと、かけがえのない経験を積み重ねてきました。
◇100周年という節目に、東京でデフリンピックが初開催されます。今の心境を教えてください。
亀澤(理):平成24(2012)年に東京で開催された第2回世界ろう者卓球選手権大会で、「素晴らしい試合を見せてくれてありがとう」と皆さんから声を掛けてもらったことが今でも印象に残っています。今年、再び東京で白熱した試合を直接届けられる機会をいただき、本当にうれしいです。大会が近づくにつれて、プレッシャーも感じていますが、今はそれ以上に開催が待ち遠しいです。
亀澤(史):これまで出場した2大会は海外での開催だったため、日本ではデフリンピックの認知度はそれほど高くなかったかもしれません。しかし、今回は東京での開催ということもあり、関心を持つ人が着実に増えてきていると実感しています。この大会が、聴覚障がいのある人をより身近に感じるきっかけとなってほしいと思っています。