文化 アニメ文化をつくる、クリエイター座談会(1)

・内納優奈(うちのゆうな)氏
東映アニメーション(株)
商品企画、販売促進
関わった主な作品:「プリキュア」シリーズ

・濵野伸一郎(はまのしんいちろう)氏
(株)ブシロードムーブ
音響制作、キャスティング
関わった主な作品:
「ニワトリ・ファイター」
「顔に出ない柏田さんと顔に出る太田君」

・岡田悠平(おかだゆうへい)氏
(株)トムス・エンタテインメント
プロデューサー
関わった主な作品:
「劇場版名探偵コナン」シリーズ
「神様はじめました」
「LUPIN(ルパン)the(ザ)Third(サード)〜峰不二子という女〜」

・小川崇博(おがわたかひろ)氏
(株)MAPPA
プロデューサー
関わった主な作品:
「全修。」
「ユーリ!!!on(オン)ICE(アイス)」
「ゾンビランドサガ リベンジ」

・川野麻美(かわのあさみ)氏
(株)マッドハウス
絵コンテ、演出、監督
関わった主な作品:
「LIAR(ライアー)GAME(ゲーム)」
「吸血鬼すぐ死ぬ」
「チ。ー地球の運動についてー」

・ファシリテーター
藤津亮太(ふじつりょうた)氏
東京工芸大学
アニメーション学科教授

■アニメ業界に入ったきっかけ
藤津:今日はみなさんの仕事への思いや、中野への印象、そしてこれからの挑戦について伺っていきます。まずは、アニメ業界に入ったきっかけから聞かせてください。

内納:幼いころから、好きなキャラクターグッズを身に着けていると、自然と勇気が湧いてくる気がしていました。大学生の時に参加したプリキュアのイベントで、作品に込められた思いに感動し、「誰かに元気や癒やしを与えられるプリキュアグッズを作りたい」と思うようになったのがきっかけです。

岡田:関西で過ごした大学時代、映画やアニメに夢中になり、気づいたら東京へ面接に行っていました。「明日から来られますか?」と言われ、覚悟を決めて大学を辞めました。全てを捨ててでも、好きなことに賭ける挑戦でしたね。

川野:私もアニメを見ているうちに、どんどんはまって。就職活動中は、別の業界も受けたのですが、ピンと来なくて。美術専攻だったこともあり、話が合う人が多そうだと思いこの業界に入りました。

小川:転職を考えていた時、アニメ業界の求人を見つけました。未経験でも挑戦できると知り、「好き」を仕事に変えるチャンスだと思い、飛び込みました。

濵野:私はちょっと異色かもしれません。アニメに強い興味があったわけではなく、友人からの誘いで入社。でも、今では裏方として支えることにやりがいを感じています。

■日々の仕事のやりがい
藤津:それぞれ違う道からこの業界に入ってきたんですね。では、今の仕事を教えてください。

小川:制作の企画や品質管理を担当しています。放送が近づくと打ち合わせが増え、プロデューサーが現場にいないと進まないことも多くなります。一日中スタジオにいることもありますが、ルーティーンがないからこそ、毎日が新鮮で肌に合っていると感じます。

川野:演出は、絵コンテを描いて尺を調整し、作画スタッフに意図を伝えることが中心です。特に「吸血鬼すぐ死ぬ」のようなコメディ作品は、テンポや間、キャラクターの表情で面白さが決まるので、やりがいがありますね。

濵野:私の一日は、300件以上のメールとの戦いから始まります。キャスティングの候補を精査したり、アフレコのスケジュールを調整したり、頭の中は常にフル回転。緊張感と責任のある仕事ですが、役に声がばっちりはまった瞬間は本当にうれしいです。

内納:グッズ企画では、刺繍の糸の色やタグのデザインなど、細部にまでこだわっています。完成した商品が店頭に並び、SNSで「かわいい!」と言ってもらえると、自分のこだわりが誰かの心に届いたんだと実感できます。

岡田:「劇場版名探偵コナン」の公開は一年に一度の大勝負。現地に行って、作品の舞台となる地を肌で感じながら、細部までこだわります。正直時間が足りませんが、毎年楽しみにしてくれているファンの方のためにぎりぎりまで粘ります。公開を迎えた瞬間、「この一年、やり切った」と大きな達成感が押し寄せます。

小川:岡田さんのように、作品に込める熱量は共通していると感じます。私が関わった「ユーリ!!! on ICE」では、実際のフィギュアスケートを撮影して映像に取り入れたり、「牙ガロ狼」ではスタントマンを起用してアクションの動きをリアルに再現したり。異業種のプロと協力するのも楽しいですね。