くらし 葦立ち(あしだち)

昭和61年に開館した足立区立郷土博物館。発端は「大谷田上土地区画整理組合」からの「郷土資料館建設要望」でした。それから39年。今回のリニューアルオープンのコンセプトは、「『郷土資料館』から『美術博物館』へ」です。従来の「歴史」と「民俗」の視点に、新たに「美術」の要素を加えて再構成。通常展示で区の歴史を押さえつつ、美術の世界にも浸れるお得な施設に生まれ変わりました

開館当初はもちろんのこと、平成24年の区制80周年を契機に本格化した「文化遺産調査」以前には、区内に価値のある美術資料が眠っているなど、専門家ですら想像できなかったといいます

足立区内、特に千住地域は空襲で大きな被害を受けましたので、「千住の琳派(りんぱ)」という流れが確認できるほど数々の作品が残っていたことは、まさに奇跡です。「次世代に何とか継承を」との各ご家庭の並々ならぬ想(おも)いと保存努力の賜物(たまもの)でしょう。かつて足立の人々は、文化遺産調査のきっかけとなった四季の草花を12カ月に分けて描いた屏風(びょうぶ)や掛け軸(企画展で前期・後期に分けて展示)などを、季節の移ろいに合わせて入れ替えつつ、彩(いろど)り豊かな日常生活を楽しんでいた、というから驚きです

「香りたつ琳派の美」と題したリニューアル企画展は、「千住の琳派」の醍醐味(だいごみ)を存分にご堪能いただける内容と自負しています。ぜひお越しください。

足立区長 近藤やよい