文化 「歴史・民俗」と「美術」で魅せる 郷土博物館の魅(み)どころ徹底ガイド(1)

2年4カ月の休館を経て、4月26日、ついに郷土博物館がリニューアルオープン。リニューアルにあたっては「美と知性の宝庫」と呼ばれる足立の文化をこれまで以上に皆さんに伝えるため、“美術”の要素を新たに盛り込みました。“歴史・民俗”を主とした従来の「郷土資料館」に加えて「美術博物館」の要素も併せ持つ、進化した郷土博物館の魅力をたっぷりお届けします!
※今後の展示や新グッズ情報などは本紙8面へ!

[基本情報]
所在地:大谷田5丁目20番1号
開館時間:午前9時から午後5時
※入館は午後4時30分まで
休館日:毎週月曜日、年末年始など
※月曜日が祝日の場合は翌平日に休館
入館料:200円
※中学生以下の方、70歳以上の方、障害者手帳をお持ちの方と介護者1人は無料。20人以上の団体は半額

■歴史・民族
◆「足立」の成り立ち[第一展示室(1階)]
江戸時代、現在の足立区の地域は、河川に囲まれた平坦(へいたん)な土地と、江戸・東京への近さを活(い)かして農業・商業が発達していました。現代まで残る足立の多彩な美術作品は、この地域の経済的な基盤があったからこそ生まれたと言っても過言ではありません。第一展示室では、そんな足立の成り立ちを紹介しています。

▽農家と耕地
江戸時代のはじめに江戸幕府初代将軍・徳川家康(とくがわいえやす)が奨励した新田開発により、足立の平坦な土地に次々と水田が整備され、幕府にとって重要な稲作地帯になりました。米のほか、生鮮野菜の産地としても発達し、本木(もとぎ)セリや栗原山東菜(くりはらさんとうさい)など、地名がついた良質な野菜が栽培されていました。

▽江戸四宿(ししゅく)最大の町 千住宿
江戸と日光をつなぐ日光道中を整備する中で、寛永2年(1625年)に誕生した千住宿。隅田川の舟運に恵まれて物資の流通が盛んになるとともに商業も発展し、天保14年(1843年)ごろには人口規模が9,956人と江戸四宿最大の宿場となりました。

第一展示室中央には、江戸時代後期の宿場の中心部(現在の千住一丁目南部)を50分の1スケールで復元した「千住宿模型」を設置。問屋場(といやば)(人馬の用意などをする)や貫目改所(かんめあらためじょ)(荷物の重量を検査する)のほか、多くの商家が立ち並ぶさまを精巧に再現しています。

▽やっちゃ場
千住宿は市場が発達し、江戸城に野菜や魚などを納める幕府の御用市場として定められました。特に野菜と果物を扱う青物問屋が集った千住河原町一帯は、「やっちゃ場」と呼ばれ賑(にぎ)わいました。

・青物問屋の店先(原寸復元)
「「やっちゃ、やっちゃ」という威勢の良いセリのかけ声が飛び交っていたことから、その名がついたそうです。」

◆豊かな農村から新たな東京の下町へ[壁面ギャラリー(2階)]
明治時代以降、東京は人口増加と都市化・市街地化が進みました。第二次世界大戦時は足立区も空襲を受け、人々の生活は大きく変化します。壁面ギャラリーでは、明治時代から昭和時代の変遷を紹介しています。

▽“足立区”の誕生
足立区は、南足立郡や千住町など1郡10カ町村が合併し、昭和7年(1932年)に誕生。昭和57年(1982年)の区制50周年を契機に「足立区意識」を高める活動が盛んに行われ、区歌『わがまち足立』のほか、まち単位での歌・盆踊りが作られました。

▽あだちふるさと食堂
かつて農村部で一般的だった食事をはじめ、足立区の「おいしい給食」事業の代表メニューの一つ「えびクリームライス」など、足立区ならではの食事の模型を展示しています。

▽戦争と学童疎開
昭和19年(1944年)以降、足立区は空襲を受けるようになり、空襲に備えて児童を地方へ送り出す学童疎開が行われました。

ギャラリーには、区歌『わがまち足立』の作曲者・團伊玖磨(だんいくま)氏直筆の歌詞清書が展示されています。公募で選ばれた歌詞を、團氏が補作・作曲しました。團氏は、童謡『ぞうさん』『やぎさんゆうびん』といった数々の名曲の作曲を手がけた人物です。

◇産業とくらし[第二展示室(2階)]
昭和20年(1945年)の終戦以降、高度経済成長や東京への人口集中などの影響により、区内は宅地化が進み工場の建設も行われました。第二展示室では、懐かしさを感じる昭和時代の生活用品や、区内で発達した産業を紹介しています。

▽家電製品の充実
電気やガス、水道のインフラ整備が進み、昭和30年代以降は家電製品が普及。足立区でも人々のくらしは利便性を増し、急速に変化していきました。

・タライと洗濯板
大正時代(1912年)から昭和40年代(1974年)
・木製洗濯機
大正11年(1922年)ごろ
・ローラー付き洗濯機
昭和30年代(1955年から1964年)
「洗濯道具も劇的に変化!」

▽スイーツランドあだち
昭和20年代から30年代にかけて、多くの菓子製造会社が足立区に誕生。現在も足立区産のお菓子が流通しています。

▽ここも魅(み)どころ
郷土博物館には東渕江庭園が隣接。造園家・小形研三(おがたけんぞう)氏が設計した趣深い回遊式日本庭園で、四季折々の表情を見せてくれます。

問い合わせ先:郷土博物館
【電話】03-3620-9393