くらし 森林レンジャーがゆく(146)

「鶯は、踊るか鳴くか、くぐり抜けるか?」
今年も残りあとわずかとなりました。私の記録だと12月は最も花が少ない月ですが、年によってはリンドウやアキノタムラソウなどの秋の花がまだ咲いていたり、春の花であるナズナやスミレの仲間が一足先に咲いていたりします。そして1月は、例年だとロウバイやマンサク、ウメが咲き始め、2月になるとセリバオウレンやフクジュソウが野山を彩るなど、まだ寒い中でも着実に春が近づいていることを知らせる早春の花が登場します。
今回は、私にとって早春の花である「ウグイスカグラ」を紹介します。日本固有の落葉低木で、北海道から九州の低地の日当たりが良い山野に自生します。図鑑などでは開花時期は4月頃とされており、本来は葉の展開とともに下向きの花を咲かせます。市内では、早い年だと2月下旬には開花を確認しているため、私にとっては早春の花です。昨年は、暖冬だったからか更に早い1月中旬に開花を確認しました。躍動感あふれる枝ぶりとは対照的な薄紅色の可憐な花は、まるで新年を祝うように天に向かって咲いていました。種名の由来には諸説あり、鶯の踊りはねるような動きを神楽踊りに見立てた、鶯の初鳴きを聞く頃に咲く、狩り座くら(鶯などの小鳥を捕らえる場所)がカグラに変化したなどです。
ウグイスカグラの見どころは花だけではありません。春は縁が美しい赤紫色の新葉。夏は小さな葉がちょこんと乗る赤い実。秋は黄色く色づいた菱形の葉(今秋は美しい黄葉は見られぬまま落葉し、季節外れの芽吹きが見られました)。冬は幼木や徒長枝(とちょうし)(上に勢いよく伸びる枝)にだけつく刀のつばのような葉の一部が枯れ残り、その上に鎮座する対の冬芽…。春夏秋冬の見どころがあり、多くの植物が葉を落とす冬の雑木林でぜひ探してほしい植物です。
花言葉は「明日への希望」「未来を見つめる」です。新年や門出にふさわしい花言葉のウグイスカグラ。2026年の初確認はいつ頃になるでしょうか。2025年を振り返りつつ、今月も気候の違いや変化などを知る手がかりとなる開花記録を続けます。
(加瀬澤)