くらし [特集]地域の相談役 民生委員児童委員(1)

●民生委員児童委員と主任児童委員
民生委員は厚生労働大臣の委嘱を受ける、非常勤で特別職の地方公務員。全ての民生委員は児童委員も兼ねています。そのうち、子どもを専門に支援活動などをするのが、主任児童委員です。いずれも任期は1期3年。活動費として実費だけ支給されます。

●12月に委員の一斉改選があります
今年は3年に1度の委員改選の年。自治会など、地域の推薦を受けて選出されます。4月から、人選が始まっています。

誰もが安心して暮らせるように、見守りや訪問など、住民に寄り添って活動する民生委員児童委員。
市では現在、395人の民生委員児童委員が23地区に分かれて活動しています。そのうち44人は主任児童委員です。
今号では、同委員として各地区で10年以上活躍する皆さんに話を聞きました。

・土沢地区会長 中山裕史さん(4期12年目)
・金田地区会長 井上勝博さん(4期11年目)
・市民生委員児童委員協議会 会長・花水地区会長 小原公一さん(6期18年目)
・中原地区会長 佐草恭造さん(5期15年目)
・市主任児童委員 連絡会代表 長岡津也子さん(6期18年目)

◆見守り続けて人をつなぐ
◇10年以上活動する中で感じている変化
(小原さん)ここ数年で民生委員児童委員が関わるべき人が、ぐっと増えたと感じます。1人暮らしの高齢者は年々増えてきました(下表)。中でも近年多いのが、2人暮らしだった夫婦のどちらかが亡くなり、1人暮らしになるケースです。1人になると精神的なショックが大きく、家から出ようとせず、周りの人ともあまり話をしないようになってしまいます。
(佐草さん)基本的に見守りや訪問の頻度は、月に1回程度です。ただ、そういったケースは2週間に1回「元気?」って様子を見に行っていますね。最初はけげんそうでも、1・2カ月もすると心を開いてくれるんです。「ちょっと話したいんだけど…」と、電話をもらえたら一安心。少しずつ状況が変わっていきます。
(小原さん)ただ、私たちが毎日行くのは難しいので、近所の方にも気に掛けてほしいとお願いしています。
(佐草さん)地域や人とのつながりは大切ですね。その方とある程度の信頼関係ができてから、社会福祉協議会と一緒に開いている食事会に参加してもらったことがありました。「こんなにおいしいごはん、久しぶりに食べたわ」と笑っているのを見て、人との触れ合いが活力になるのだ、と改めて感じました。
(小原さん)最近は分譲マンションに住む方が増えてきました。一軒家に比べて近所の方との交流が薄くなるので、特に孤立しやすいんです。訪問すると泣きながら話をしてくれる方もいます。地域や関係機関とのつながりは、災害などの緊急時でも重要です。自治会に入っていない方は地域コミュニティーで存在を把握できないこともあります。存在に気付き、地域とつなげることは、私たちの大切な役割の一つです。

・「ひとり暮らし高齢者調査」で、1人暮らしであると判明した人数です。
調査は民生委員児童委員が対象者を訪問。令和2年・3年度は新型コロナの影響で調査なし。4年度は2カ年かけて調査。6年度から調査年齢を段階的に引き上げ。

◇多様化する相談 相手の気持ちを大切に
(小原さん)近年の活動で特に慎重に対応しているのは、児童虐待の相談です。簡単に介入できる話ではないですから。社会的な変化なのか、「もしかしたら……」と、心配して情報を伝えてくれる方が増えました(下グラフ)。
(井上さん)デリケートな問題です。市こども家庭課や児童相談所につないだり、主任児童委員に伝え、一緒に対応を考えたりしています。
(長岡さん)主任児童委員は各地区に2人ずついますが、自分たちだけで各家庭の問題に気付くのは難しいです。地域からの声を仲間である民生委員が届けてくれるのは、非常に助かっています。また学校や保育園からも連絡が入ります。さまざまな問題の元をたどれば、貧困にあることも多く、これもなかなか気付きにくいんです。
(井上さん)さらに本当に危機的な状況だと分かっていても、私たちだけの判断では勝手に動けません。各家庭で考え方も違うし、子どもたちの気持ちも大事ですから。
(長岡さん)ここでは話しきれないくらい問題が多様化してきました。関係機関と連携して、一つ一つ丁寧に対応していくことが解決につながります。優先すべきは地域の中で親子が生きていくこと。親子のそれぞれの思いを聴いて対応していきたいと思います。

・グラフ