子育て 進メ、鎌倉ペンギン

「Society5.0」の時代をしなやかに泳ぐ子どもたちを育む
鎌倉市教育委員会

■第21回“らしさ”に出合える「由比ガ浜中学校」開校
文・高橋洋平[教育長]

由比ガ浜中学校(以下、由比中)は学びの多様化学校(不登校特例校)として4月に開校しました。
開校式では「今までなかなか入れなかった教室で、授業が受けられてうれしい」という声もありました。小学校低学年から登校できなかった生徒が、数年ぶりに学校に通う喜びを感じているようでした。特に鎌倉体育館での体育や、自分の”好き”を学びにする「МY探究」が人気です。
部活も行事も当番も校則も制服も決められていない学校なので、生徒たちとスタッフと呼ばれる先生とで一から創って運営しています。
「自分らしく学び、自分らしく成長できる学校」という由比中のビジョンを実現するため、スタッフも日々試行錯誤しています。私にとっても由比中の生徒たちを通じて、子どもや学習者への自身の考え方を見つめ直す機会になっています。
子どもは大人と比べて経験や知識が少ないので、教えないと学ばないと思われがちですが、そうではないと感じています。どんな子どもも学ぶ力を持っていて、それが環境によって発揮できないだけです。自分や周りが弱みだと思っていることも、工夫次第で強みに変えられるのです。
そして、多様性を前提にした、自己決定を大事にする「学習者中心」のコンセプトは、由比中だけではなく、共生社会の共創を目指す、鎌倉の大人たちにも通じることだと思います。
『鎌倉教育史』によると、明治期にあった尋常由比浜小学校の教室には、黒板やチョークはありましたが、子どもたちは鉛筆もノートも持っていなかったそうです。
先人たちは、このように何もないところから、100年かけて教育環境を整え、工夫を重ね、学びを創ってきたのかと、歴史と文化の重みを感じます。
鎌倉の次の歴史に向けて、誰もが「炭火」のように、学びの火を生涯灯し続けられるまちを目指し、学習者中心の学びを一歩ずつ前進させていく想いが強くなりました。
(注)教育委員会の取り組みを紹介する、「進メ、鎌倉ペンギン」note版は鎌倉市教育委員会noteで検索を!