くらし 農業の未来と地域の魅力をつくる湘南黒豆

普段は大根や小松菜などを作っている茅ヶ崎の農家が栽培し始めた、早生(わせ)の枝豆が「おいしい」と評判を呼び、「湘南黒豆」として地域で広がりをみせています。生産者の会「チーム湘南黒豆」の皆さんにお話を伺いました。

Q「湘南黒豆」とはどんな枝豆ですか?
早採れの枝豆は関東では珍しく、5月下旬から収穫が始まり、一般的な枝豆が店頭に並ぶ7月上旬までに販売を終えます。
枝豆には大きく分けて、青豆、茶豆、黒豆があり、湘南黒豆は、黒豆独特の濃厚さと深い甘み、ほくほくした食感が特徴です。

Qブランド化の経緯を教えてください
2003年に早生の枝豆のサンプル種をもらって作ってみたら、そのおいしさに仲間内でも評判になりました。市場で取り扱ってもらえるよう交渉する中で、一般的な枝豆とは違うことが分かってもらえるようにブランド化を決意。「湘南黒豆」のオリジナルロゴマークを作り、パッケージに貼って、2020年から販売を始めました。最初は茅ヶ崎の農家3戸で、今では寒川・藤沢・平塚・厚木も加わった19戸で生産しています。

Qリスクや手間があっても挑戦する理由は?
湘南黒豆は1月~2月に種をまきます。早生の品種とはいえ、遅霜(おそしも)や気温差の影響で、苗の半分くらいはダメになってしまいます。温度をビニールトンネルで管理するなど、リスクや手間があっても、少しでも早く地域の皆さんに湘南の夏を感じてほしいという思いで作っています。また、シーズン前なので他の枝豆の流通が少なく、一足先に湘南黒豆のおいしさを味わってもらうことで購入者の印象に残ります。「一度食べたら、もう戻れない」と思ってもらえたら嬉しいですね。
湘南黒豆の生産農家は増えていますが、一つのさやに大きな2~3粒が入ったものだけを目視で選別するなど、品質を下げないために厳しい規格を設けています。1粒のものは規格外になってしまいますが、豆のサイズや味に遜色なく、捨ててしまうのはもったいない。そこで発想を転換して、真珠に見立てた「畑の湘南黒真珠」として販売したところ、遊び心がありフードロス解消にもなると購入者から好評をいただいています。

Qおいしい食べ方は?
まずは味付けせず、そのままの味を楽しんでください。茹でるとおいしさが逃げてしまうので、水洗いした後、商品袋に戻してレンジでチンすれば、すぐ食べられますよ。

Q今後の展望は?
そもそも、湘南黒豆は小規模農家が安定して収入を得るために、メインの作物に加えて生産する商品です。農家を取り巻く環境は厳しいですが、あきらめずにチャレンジし続けることが大切。だからこそ、良いものが提供できれば生活に直結するし、生きること、農業活動への喜びがあふれてくるんです。
5年後、10年後に湘南黒豆の生産量がもっと増えて、「西は丹波の黒豆、東は湘南黒豆」といわれるような地域の特産品や魅力になったらすごいでしょ。今年は良い出来なので、私たちが大切に育てた特別な味をぜひ楽しんでください。

●湘南黒豆が購入できるところ
※今年の販売は7/7(月)まで(一部除く)
茅ヶ崎海辺の朝市、道の駅湘南ちがさき(7/7(月)オープン・出荷状況による)、JAさがみわいわい市寒川店・藤沢店、米ディハウスくげぬま、グリーンセンター渋谷、平塚市内のしまむらストアー全店、横浜水信ラスカ平塚店・ラスカ小田原店

●「チーム湘南黒豆」の皆さん
・本間俊秀さん
皆で協力しながら、ブランドを育てたいです
・八幡直樹さん
枝豆選別機が買えるように頑張ります
・出口信善さん
茅ヶ崎海辺の朝市、道の駅に出店します
・白波瀬(しらはせ)正和さん
農業のおもしろさにはまり、就農3年目です
・生川仁さん
試行錯誤しながら湘南黒豆にチャレンジしています