- 発行日 :
- 自治体名 : 神奈川県逗子市
- 広報紙名 : 広報ずし 2025年12月号
身の回りの人々や地域の環境、そして自分自身を信じ認めて前向きに生きる市民に、このまちで生きる意味を聞きました。
■ALSと残りの人生を生き切る
(一財)すこやかさゆたかさの未来研究所
代表理事
畠中一郎さん(桜山)
筋萎縮性側索硬化症(以下、ALS)の患者で、現在は車椅子で生活を送る畠中さん。ALSの患者とその家族を支援する一般財団法人を設立し、代表を務めている。
●長年ミッションを探し続けて
ALSは、体を動かすことが徐々にできなくなる病気。治療法のない難病で、人工呼吸器を使用しないと5年ほどで死に至ると言われている。
畠中さんは、ALSと診断された翌年の2022年に財団を設立した。その精力的な活動には、35年前、駐在先のアフリカで巻き込まれた暴動の影響が大きい。多くの人が目の前で亡くなり、生き残った罪悪感に苦しんだ。「自分はいつか意味あることをさせられる。ミッションを背負ったんだと思い込ませるしかなかった」。
診断を受けた病室で「これがミッションか」と思った畠中さん。財団設立後は、全国各地の患者に会ってニーズを探ることから活動を始めた。
●病気を乗り越え、有意義に生きる
ALSの患者には、余命宣告を受けて深い絶望の中にいる人も多い。財団では「寄り添う」「支える」「乗り越える」の3つの目標を掲げ活動している。畠中さんは中でも「乗り越える」ことが大事だと話す。「余命が分かることで、人生のゴールがはっきりする。残りの人生をなんとか有意義に生き切るべきだ」。
今年の7月から救急車を改装した「ゆめばす」の事業を開始。電動車椅子のまま乗車できる車を、原則無料で貸し出している。「難病患者にとって、娯楽のための移動は事実上困難。それでも諦めず、できることがあると実感するために、ゆめばすを使ってもらえるはず」と期待を語る。
●逗子から前向きなメッセージを
静かで通勤が便利な湘南エリアに暮らしたいと、2001年から逗子での生活を始めた。「海と山、駅前の商店街が大好き」と笑顔で話す。
「退職したり、病気で障がいが生じたりすると、“第一線を引いた”と考えてしまうもの。しかしこれは今までの人生を見直すきっかけにもなる。前向きなメッセージの発信基地に逗子がなってほしい」。
