くらし 【特集】よりそい、つなぐ― 民生委員・児童委員一斉改選―

12月に民生委員・児童委員(以下、「民生委員」と表記)の一斉改選が行われます。そこで、その役割や活動内容について広報を担当することになった福いいネ!くん。「どんな人が民生委員になるのか?」「どんな活動をするのか?」など、分からないことだらけで頭を抱えていたところに、救世主が現れます。
※詳しくは本紙をご覧ください。

◆民生委員・児童委員とは
暮らしや介護、子育てなどに関して、地域の最も身近な相談役・専門機関へのつなぎ役としてさまざまな活動を行っている地域のボランティア。
地域から推薦され、厚生労働大臣から委嘱される公的な身分。給与は支給されないが、活動に必要な経費や交通費などの一部は支給される。

◆民生委員のチカラ
民生委員の役割は、大きく分けて二つ。一つは、地域の市民に「よりそう」こと。自らも地域住民の一員として、担当する地域の高齢者や障がいを持つ人の安否確認や見守り、こどもたちへの声掛けなどを行います。
もう一つが、人と人とを「つなぐ」こと。地域住民の相談の内容に応じて、必要な福祉サービスなどが受けられるよう、専門職や行政、関係機関などと連携して支援に当たります。

◇「よりそう」ことが難しい時代
近年、とくに新型コロナの流行以降、地域に新しいかたちの課題が浮き彫りになりました。増加する独居高齢者やひとり親家庭のケア、ひきこもり、虐待やヤングケアラーの問題など、それらに共通するのは、外部からその実態がなかなか判断しにくい「孤立」という問題です。
ある民生委員は、「コロナ前は、皆さんもっと気軽にいろいろなことを話してくれていた。今は内に閉じた空気があり、声をかけるのを遠慮してしまう雰囲気もある」と言います。
行政の支援や福祉サービスは拡充してきましたが、それらも必要な人にまで届かなければ無駄に終わってしまいます。
そこには、同じ地域に住み、普段から関係性を築いている民生委員だからこそ、気づける小さな変化やサインがあります。
中藤島地区の民生委員前川逸子さんは「気になるお宅には、自分の名前と連絡先を記し『いつでも相談してください』と書いたカードを届けている。最初は訪問を遠慮されても、何度も伺うことで徐々にお話をしてくれるようになることもある」と言います。
近年頻発し、激しさを増す自然災害の際に、自分で避難することが難しい高齢者や障がいを持つ人たちが、地域のどこに何人住んでいて、いざというときに誰が支援するのか、そうした防災にも、民生委員が大きな役割を果たしています。
「もし民生委員がいなくなったら、一人暮らしの高齢者など、いざというときに取り残されてしまう恐れのある人がたくさんいると思う」と指摘する民生委員もいます。
民生委員は、今こそ、地域になくてはならない存在だと言えます。

◇地域と深く関わること
地域のつながりがかつてより希薄になり、地域住民が交流する機会も減りました。民生委員のよりそい、つなぐ活動は、民生委員をやる人自身にとっても、地域に深く関わる貴重な契機になっています。
ある民生委員は、もともと人と話すのが大好きで「古くからその土地に住む高齢者の方たちから、昔の地理や地域の出来事などについて聞けるのが面白い」そうです。
豊地区の民生委員は「正直に言うと、地域に関わることは最初はとても面倒に感じる。でも、例えば、夏休みに地域のこどもたちのためにイベントを企画したとき、準備は大変な思いをしたけど、その先にあったこどもたちの飛び切りの笑顔には、何にも代えられない喜びをもらえた」と言います。
また、民生委員の活動は、社会福祉協議会や地域包括支援センター(ほやねっと)、福祉委員など、地域の多くの人たちとの密な連携によって成り立ち、それによって地域福祉のネットワークが築かれています。中には、活動を通して得た問題意識をもとに、さらなる取り組みを展開している人たちもいます。
清明・麻生津地区で民生委員になったことをきっかけに出会った吉田智美さんたちは、「こども食堂」を始めました。
民生委員として各家庭を訪問するだけでは、なかなかアプローチできない貧困の問題に対し、悩みを抱える人もそうでない人も、みんなが気軽に集まれる場所を設けることで対処しようと取り組んでいます。
地域課題を解決するという同じ目的をもって共に活動できる、かけがえのない仲間ができたと言います。

◇よりそい、つなぐことは特別なことじゃない
ある民生委員は、皆さんに一度は民生委員を経験してみることを勧めたいと言います。「住んでいる人たちや地域のこと、福祉サービスや行政など社会の仕組みがどうなっているかなど、将来自分や家族のために必ず役に立つことを知り、身に付けることができるから」。
また、委員にはならなくても、その活動に協力することもできます。「もし、隣りの家の人を最近見かけない、近所の高齢者の様子がおかしいなど、気になることがあったら、私たち民生委員に知らせてほしい」と言います。
加齢は全ての人に平等に訪れます。障がいや病気などの問題は、いつ自分の身に降りかかるか分かりません。そんなときに、孤立することなく、気軽に相談できる人が周囲に大勢いる、そんな地域社会であったら、と思いませんか。
今年は民生委員の一斉改選の年です。これを機に、民生委員の活動を含め、地域に関わるということについて、あらためて考えてみてはいかがでしょうか。

「福祉とは、みんなで協力して、みんなで幸せになること」。私は40代から民生委員を続けて、多くの人たちにお世話になり、貴重な経験を得てきました。今の若い世代の人たちにも、ぜひこの喜びを味わってほしいです。人生100年時代、自分のことだけを考えて生きていくには人生は長すぎますよ!
福井市民生児童委員協議会連合会
会長 大島友治さん

「ひとりぼっちにしない・させない、誰もが自分の居場所をもてる社会」の実現のため、民生委員の皆さんの力は不可欠です。市民の皆さんも、民生委員活動にご理解とご協力をお願いします。
福井市長 西行茂

問合せ:福祉政策課
【電話】20-5786【FAX】20-5708