くらし 公民館報いな-いっぷく

今年4月に行われた中尾歌舞伎春季定期公演で「三六(さぶろく)災害半世紀」が上演されました。この演目は昭和36(1961)年に伊那谷を襲った豪雨災害を題材にしたもので、災害の記憶を後世(こうせい)に伝え残したいとの思いで創作されたオリジナルの演目です。超満員となった会場は、保存会員の迫真の演技で熱気に包まれ、のどかな村で発生した土石流の悲劇と、そこに住む人々の人情物語の熱演を通して、災害の記憶をしっかりと語り継ぐことができました。
三六災害の記憶は私にはありませんが、昭和57(1982)年8月に発生した台風10号の災害は忘れることができません。この年に社会人となり消防団に入団したばかりの私が、初めて遭遇(そうぐう)した大きな災害でした。
黒川が氾濫(はんらん)して仙流荘の一部が流失した河原や、美和湖一面が流木で埋め尽くされてしまった光景は、今でも記憶に残っています。
これまで伊那谷は、三六災害をはじめとする大きな災害に何度も見舞われています。過去の災害の体験や、教訓を様々な機会を通して後世に伝えていくことが、災害を自分の事として捉え、大切な命を守るための積極的な行動に結びついていくものと思います。
9月1日は「防災の日」。

長谷公民館長 北原秀志(きたはらひでし)