- 発行日 :
- 自治体名 : 長野県伊那市
- 広報紙名 : 市報いな 令和7年11月号
冬は、星空が美しく見える季節です。
今回の特集では、冬の星空の楽しみ方を、長野県自然観察インストラクターの野口輝雄(のぐちてるお)さんにお聞きしました。
■なぜ、冬の星空は美しいのか?
▽理由(1) 冬の星空は1等星が多くある
星空には、21個の1等星があります(そのうち、日本で見られるのは15個)。それぞれの季節で見える1等星の数は、春が3個、夏が4個、秋が1個に対して、冬は7個もあります。ほかの季節に比べ、冬の星空は多くの1等星が輝いています。
▽理由(2) 空気の透明度が高く、気流が乱れている
冬は、空気が乾燥していて上空の気流が乱れていることが多い季節です。空気が乾燥すると空気の透明度が上がり、透きとおった空気をとおして星がよく見えます。それでは、なぜ気流が乱れると美しく見えるのでしょうか?
それは、空気の乱れにより星の光が曲げられるためです。光が曲げられると結果的に星の光が「きらきら」と瞬(またた)いて見えるようになります。
多くの1等星がきらきらと瞬きながら輝く星空を、透明度の高い空気でより美しく見ることができる。だから、冬は星空を美しく見ることができるのです。
■冬の代表的な星座を紹介します
▽おうし座
おうし座には赤く光る1等星「アルデバラン」があります。この星の少し上に見える青い星々の塊が「プレアデス星団(M45)」です。日本では「すばる」の名前で親しまれ、『枕草子』では美しいものの例えとして登場します。
この星団は120個程度の星の集まりですが、肉眼では6つの星を見ることができます。この星々は、ギリシャ神話において7人の娘に例えられ、それぞれに名前がありますが、7番目の娘はよく見えないことから「迷子の娘」と呼ばれています。
▽オリオン座
この星座は、勇者オリオンが狩りで得た獅子の毛皮を持っている姿を現しています。
星座の真ん中あたりにある3つの星は「三つ星」として有名ですが、そのすぐ下にも縦に3つ並んだ「小三(こみ)つ星」があります。実は、これは星ではなく星雲で「オリオン大星雲(M42)」と呼ばれています。地球からは1600光年離れていて、今でもこの中で新しい星々が生まれています。
■オリオン座とさそり座の星座伝説
オリオン座には2つの星座伝説があり、その1つは夏の星座であるさそり座との物語です。
海の神ポセイドンの息子である狩人のオリオンは自分の力強さを誇る暴れ者で、神々から嫌われていました。ある時、オリオンが「この世の中で自分より強いものなどいない」と言い放ち、大神ゼウスの妻ヘラの怒りを買いました。ヘラは、オリオンを懲(こ)らしめるため猛毒のさそりをオリオンの元へ放ち、オリオンは足を刺され命を落としてしまいました。さそりはこの功績を認められ、星座になりました。後に、大神(おおかみ)ゼウスは亡くなったオリオンを哀れみ、オリオンも星座として天に上げました。しかし、この両者が再び星空で会わないように、さそり座は夏の、オリオン座は冬の星座となりました。
今でも、西の山にさそり座が沈むと東の山からオリオン座が出てきます。決して、2つの星座が一緒に見えることはありません。
▽星の明るさを表す単位「等星」
※6等星を100個集めると、1等星の明るさになります。
▽距離を表す単位「光年」=「光が1年かけて進む距離」
1光年…9兆4600億km
※詳しくは本紙をご覧ください。
■秋から冬の星座
※図は本紙をご覧ください。
■冬の星空を観察してみよう
(1)まずはしっかりと温かい服装で外に出ましょう。
(2)観察する場所は、南の方向を中心に東から西の方向が開けている所にしてください。下におすすめの観察スポットを紹介していますので、参考にしてください。
(3)観察スポットについたら、まず南の方角で50度程度上の星空を見てみましょう。二等辺三角形の形をした明るい3個の星が見つかると思います。これが「冬の大三角形」です。冬の大三角形には、星座と1等星が3つずつあります。正面(南の空)にあるのがオリオン座とベテルギウス、左上がこいぬ座とプロキオン、左下がおおいぬ座とシリウスです。このシリウスは、星空にあるすべての星の中で最も明るく、ぎらぎらと青白く見えます。
(4)残りの冬の星座と1等星は、オリオン座の上(天頂の方向)に見つけられます。左からふたご座とポルックス、ぎょしゃ座とカペラ、そしてオリオン座の右上におうし座とオレンジ色のアルデバランがあります。
(5)アルデバランの少し上を見ると淡い星の塊が見えます。これが「すばる」です。また、オリオン座にある横に3つ並んだ星のすぐ下に、縦に並んだ「小三つ星」が見えます。その中心がオリオン大星雲です(詳しくは右のページ(本紙参照)をご覧ください)。
(6)最後に、よく見るとぎょしゃ座の西側には秋の星座であるペルセウス座とカシオペア座がまだ輝いています。見つけてみてください。
※特集の文章は野口輝雄さんからご提供いただきました。
▽おすすめの観察スポット
・高遠浄化センター付近
・細ヶ谷グラウンド
・権兵衛トンネル前のチェーン脱着所
・三峰川榛原河川公園の護岸道路
※いずれの観察スポットでも熊との遭遇にご注意ください。
※地図は本紙をご覧ください。
