- 発行日 :
- 自治体名 : 長野県東御市
- 広報紙名 : 市報とうみ 2025年10月号
■こんぺいとうと教育
田中小学校 校長 龍野 正和
とげを持った独特な形をしたちょっと懐かしいお菓子、こんぺいとう。いったいどうやって製造しているのでしょうか。調べてみると、次のようなことが分かりました。
ゆっくりと回転している、熱せられた大きな釜へ小さなザラメを「核」として入れ、職人が柄杓(ひしゃく)で糖蜜をゆっくりとかけ、棒でかき混ぜる。この作業を小さいこんぺいとうで最低2日、大きいものになると2週間続けると出来上がる。
こんぺいとうの特徴であるとげは、一粒に17~36個程度あると言われています。実は、このとげがなぜ出来るのかという、はっきりとした理由は分かっていないそうです。一説によると、釜の表面に張り付いた1点が、釜が回転することにより引っ張られて転がるうちにこの1点ばかりがくっつくようになり、その作業を繰り返すことで表面にいくつかこうした点ができ、次第に凸凹がはっきりしてくるとのことです。つまり、小さなとげが引っ張られ、そのとげが伸びるにつれて全体も大きくなるのです。
これを聞いた時、私はこんぺいとうと人はなんだか似ているなと思いました。とげは、その人の持つ長所や得意なことといったところでしょうか。へこんでいるところ(苦手や短所)を埋めて大きくするのではなく、とげを伸ばすことで結果的に全体が大きく(成長)なり、同時にとげ(長所や持ち味)もよりはっきりしてくるのです。
また、こんぺいとうを大きくするには、様子をよく見ながら絶え間なく糖蜜をかけ続けなければなりません。これは大人が子どもたちをいつも見守り、一人ひとりに合わせて丁寧に関わっていくということと似ている気がます。こう考えるとなんだか、こんぺいとうづくりは教育そのものです。
私たち大人は、やはり子ども一人ひとりのよさに着目してそれを伸ばしたい。つい欠点やできないところに目が行きがちですが、その子のよさや持ち味を見出し伸ばしていく営みが、子どもが様々な課題を克服し、大きく成長することにつながるのではないかと思います。こんぺいとうは一見不揃いですが、それが魅力でもあります。教育も、みんなが同じ形ではなく、「それぞれの個性」が表に出ているようにしていきたいものです。