くらし [特集]とうみのくるみのひみつ!
- 1/35
- 次の記事
- 発行日 :
- 自治体名 : 長野県東御市
- 広報紙名 : 市報とうみ 2025年11月号
東御市は、全国のくるみ生産量の約半分を占める「くるみの里」として知られています。市内では主に「信濃くるみ(シナノグルミ)」が栽培されており、その実は濃厚な味わいと扱いやすい殻の薄さで高く評価されています。今回は、くるみと人との関わり、そして信濃くるみ誕生の物語を紹介します。
■古代から親しまれた栄養の宝庫
くるみとの関わりは、縄文時代にまでさかのぼります。当時の住居跡からくるみの殻が発見されており、すでに貴重な食料として利用されていたことがわかっています。
現代においても、くるみは「おはぎ」や「五平餅」などの郷土料理、和菓子に使われており、その香ばしい風味が食卓を彩っています。
■「信濃くるみ」の誕生
信濃くるみの祖先は、古代ペルシャ地方(現在のイラン・カスピ海沿岸)で生まれた「ペルシャグルミ」と言われています。
このペルシャグルミが、東回りでシルクロードを旅するなかで、少し特徴の違う「カシグルミ(テウチグルミ)」が生まれ、8世紀初頭に日本に伝わりました。
一方、ペルシャ地方から西回りに、ヨーロッパを経てアメリカ大陸へ渡った「ペルシャグルミ」は、明治時代にアメリカから横浜や軽井沢に持ち込まれました。
やがて、ペルシャグルミとカシグルミが東御市で出会い、自然交雑によって誕生したのが「信濃くるみ」です。
1958年からは、長野県が信州大学やくるみ振興会と連携して優良な個体を選抜し、現在の主力品種である「清香(せいこう)」「信鈴(しんれい)」「要鈴(ようれい)」「東晃(とうこう)」「豊園(ほうえん)」「美鶴(みつる)」の6品種が推奨品種として選ばれました。
現在では、信濃くるみは日本を代表するくるみとして、全国へ出荷されています。
■「くるみの里」誕生の背景
大正時代、和村(現在の東御市和地区)では、大正天皇の即位を記念して、くるみの苗木が全戸に配布され、これが栽培の始まりとされています。
1975年をピークに栽培面積は一時減少しましたが、「日本くるみ会議」が発足し、市と連携して技術普及に取り組んだことで、再び活気を取り戻しました。現在では、市内で約8000本のくるみが栽培されています。
東御市は、日照時間が長く、雨が少ないうえ、涼しくて水はけのよい環境に恵まれており、くるみの栽培に最適な土地です。こうした自然条件が「くるみの里・東御市」を支えています。
■とうみのくるみのひみつをサンファームとうみに聞いてみた
・サンファームとうみ(東御市鞍掛1220番地)
概要:4.4ヘクタールの敷地内に管理棟、就農トレーニングセンター、くるみのほ場(試験・品種保存・育苗)、その他のほ場(ブドウ、リンゴ、アンズ等)が整備。
◇サンファームとうみってどんなところ?
サンファームとうみは、昭和36年に「長野県農業試験場東部畑作試験地」として設置されました。平成6年に県から旧東部町に譲渡され、現在ではくるみの苗木生産や栽培試験などを行っている施設です。今回は、サンファームとうみのスタッフの泉さんと脇沢さんにお話をお聞きしました。
◇東御市はどうしてくるみの産地なんでしょう?
国内で流通するくるみの約99%は輸入品です。国産のくるみの栽培面積は全国でおよそ130ヘクタール。そのうち6割にあたる約80ヘクタールが東御市にあるため、東御市は日本一のくるみの里と言われています。
ここサンファームとうみでは、くるみの生産を行うとともに生態調査や果実の肥大調査を行っています。全国的にも、くるみの研究を専門に続けている施設は東御市だけです。遺伝試験や品種保存にも力を入れており、国産のくるみづくりの発展と普及を支えています。
◇くるみの魅力を子どもたちにも
毎年10月、くるみの収穫時期を迎えると、教育委員会や日本くるみ会議の協力のもと、市内の小学校高学年を対象に「くるみの収穫体験」が行われています。
子どもたちは長い竹の棒を手に、頭上の木を見上げながら、枝に実ったくるみを落としていきます。
普段私たちが食べているのは、収穫後に約1か月間乾燥させたくるみですが、この体験では収穫したばかりの〝生くるみ〟を味わうことができます。生くるみは水分を多く含み、やわらかく、ほんのり甘いのが特徴で、この時期にしか味わえない特別な風味です。
子どもたちが自らの手でその一端を体験することは、ふるさとへの誇りや、食・農への関心を育む大切な学びの時間となっています。ぜひ現地に足を運び、ふるさとの魅力に触れてみてください。
■毎日食べたい!栄養価の高い〝ナッツの王様〟くるみ
◇オメガ3脂肪酸で血管と脳を守る
オメガ3は体内で生成できない必須脂肪酸で、血流を良くし、動脈硬化や認知症予防などに効果があります。
くるみ30g(約ひとつかみ)で、1日に必要なオメガ3脂肪酸の目安量をほぼ満たせます。
◇抗酸化成分で若々しさを保つ
ポリフェノールやビタミンEが活性酸素の働きを抑え、肌や血管の老化防止に役立ちます。
また、メラトニンも含まれ、睡眠の質向上にも期待されています。
◇食物繊維とミネラルで体調を整える
食物繊維が腸を整え、マグネシウムや鉄などのミネラルが代謝や貧血予防をサポートします。
今年収穫されたくるみは、約1か月かけてじっくりと乾燥させ、11月中旬頃から市場に並び始める予定です。
香ばしく風味豊かな、日本一の東御のくるみをぜひご賞味ください。
