くらし 声をカタチに 声を未来に 藤井浩人市長コラム

■「死を考え、生を考えること」
二十代前半、アジアを旅したときのことです。訪れた街々では日本ほど衛生環境が整っておらず、まちなかを葬列が通り、人々が祈りをささげる場面に幾度も出会いました。死は遠い出来事ではなく、日常にあることを強く実感しました。
日本は世界有数の長寿国です。一方で、私たちの暮らしは死という現実から隔てられがちです。健康であるうちは「もしも」を考える機会が少なく、死について語ること自体がどこかタブー視されます。けれども、人生の終わりをどう迎えたいかを考えることは、実は「今をどう生きるのか」を問い直すことでもあるのではないでしょうか。
自分は何を大切にしているのか。どのような医療・ケアを望むのか。元気なうちに家族や信頼できる人と語り合い、思いを共有しておくことは、いざという時に「自分らしい選択」を支える力になります。
「美濃加茂市版エンディングノート」は終活のチェックリストではなく、価値観を言葉にし、対話の出発点を整えるものです。死を考えることは怖いことではなく、むしろ「限りある命」を意識することにつながります。
あの旅以来、自分の人生を「社会に対して、どう活いかすのか」を考えるようになりました。限りある命を自覚し合い、一日一日を丁寧に、時に大胆に生きる。「今日をどう生きるのか」このノートとともに、皆さんと考えていけたらと願っています。