- 発行日 :
- 自治体名 : 岐阜県八百津町
- 広報紙名 : 広報やおつ 令和7年11月号
団長 大鋸悟(八百津町教育委員会教育課長)
■はじめに
5月の第一回説明会。出発日の9月8日が4カ月も先でとても長く感じられ、なかなか実感がわきませんでした。しかし、夏休みに入って事前研修を開始し、歌、英会話、派遣先について学ぶ中で、回を重ねるごとに子どもたちの発言も増え、出発に向けて次第に盛り上がりを見せてきました。
この派遣の目的は「異文化に対する理解力を養い、コミュニケーション能力を高め、歴史や文化を学び、国際的な視野を広めること、人道的行為、そして、この経験をもって国際感覚豊かな次世代を担う若者を育成すること」です。
これを達成するためには、事前に学習し、経験を積んで、実施後には振り返って考えることが重要となります。
11日間の研修では、多くの方々に協力をいただき貴重な体験をさせていただきました。
■リトアニア カウナス市
八百津町と友好交流の合意を交わしているカウナス市滞在中は、新しい建物と、歴史ある古い建物とが調和しているまちづくりや、豊かな自然、食や歌、そしてなにより人の温かさを強く感じました。
カウナス市での生徒たちは、ドブケヴィチュウス学校の全面協力で生徒の家庭にホームステイさせていただき、ホームステイ先の生徒といっしょに学校の授業に参加し、本年度初めて参加した大学講堂を利用した「SDGsについての発表会」などを体験しました。
ホームステイがおそらく一番の不安であったであろうと思いますが、事前に各家庭と連絡を取っていたため、とてもフレンドリーな初対面で、そのまま各家庭にわかれていきました。連れられる後ろ姿に向かって、プレッシャーにならないよう、心の中で「頑張れ」と見送りました。
ホームステイ先は、ドブケヴィチュウス学校の校長先生自らが経験と理解のあるご家庭を選んでくださっており、毎日の様子は校長先生経由で報告していただき、それを保護者にお知らせしていました。土・日曜日は各ホストファミリーで、国内(リトアニアの面積は北海道の8割程度)のいろいろな場所に連れて行ってくれたり、さまざまなイベントを計画してくれたりしてリトアニアの生活を体験させてくれました。
最終日にはホストファミリーの生徒と八百津町の生徒が、みんなで抱き合って別れを悲しむ場面もあり、八百津の生徒からは帰りたくないという言葉が出るほど心を通わせることができたホームステイであったようです。
■ポーランド アウシュビッツ・ビルケナウ博物館
八百津町に住む私たちにとって杉原千畝氏の人道的行為について学ぶことはとても大切なことです。第2次世界大戦中におきたユダヤ人大量虐殺行為、その行為に至ったきっかけや結果、当時の世界情勢などについても学習し、杉原氏の行った人道的行為がどれだけ大きなことであったのかを知るのは重要なことと思っています。
事前に、八百津町の杉原千畝記念館で学習をしていきましたが、実際に現地のアウシュビッツ・ビルケナウ博物館に行き、日本人のガイドさんから、当時の様子や収容された人たちがどういう人でどのような扱いを受けたかなど、展示物や写真、遺物や実際に収容された現場などの説明を受け、現地で実際に見ることでしか感じられない重みや悲しみを知り、平和の大切さを再認識しました。
■おわりに
最終日、飛行機の待ち時間を利用した最後の反省会では、単にこんなことがありましたと事実を述べるだけでなく、事実についてどう感じて、それについてどう考え、今後どう行動していきたいかなど、しっかり考えてまとめた意見を出すことができるようになり、短期間での大きな変化と成長を感じました。
また生徒たちは、出発前の“期待"、ホームステイの“不安"、実際のホームステイを経験した“楽しさ"、別れの“悲しみ"、アウシュビッツでの“痛み"、帰り着いた“安堵"など、短期間でさまざまな心の変化という経験も積み、これも大きな成長の糧となりました。
日本は島国で他国との往来も容易でないため、言語はほとんど日本語だけで生活できます。
一方、リトアニアは周辺国との間でいくつもの争いはありましたが、今はEUという枠組みの中で周辺国との往来があり、複数の言語が当たり前のように使われています。
今後グローバル社会に出て、対等に付き合っていくためには言語の学習は不可欠であり、相手の生活文化の理解も含め、今回の生活経験は大いに学びになったと思います。10名の生徒たちの未来に大いに期待しています。
結びにあたり、ご寄附をいただいた吉田茂氏や縁を結んでいただいた杉原千畝氏はもとより、滞在中すべての行事に関わり面倒を見ていただきましたドブケヴィチュウス学校のリナ校長先生をはじめとする先生方やカウナス市役所のみなさま、アレクソータス地区のみなさま、ホストファミリーのみなさま、事前研修を行っていただいたみなさま、そして保護者のみなさまなど、今回の研修には本当に多くの人々に関わっていただき助けていただきました。
こうした関係していただいたすべての方々に感謝して報告とさせていただきます。
※次年度の中学生海外派遣研修事業の募集は、1月末頃を予定しています
