くらし 村長室から

澄んだ空気の中、枯れ葉舞う風に晩秋の訪れを感じる時季となりました。
古代中国の五行思想で四季を人生に例えて、秋は白秋といい、老いと悔恨の情が感じられる微妙な時期ということを学びました。性別、年齢などによりそれぞれ感じることは異なるとは思いますが、75歳になった私としては一抹の寂寥(せきりょう)感とこれからの生き方を考えさせられる季節です。そんな気弱な気持ちにむち打って、10月は一か月のうち村外へ出張した日が“19日”と精力的に活動しました。
その中で感じたことを幾つか記したいと思います。
和歌山市で開催された全国国保地域医療学会で、開設者サミットが行われ、公益社団法人全国国民健康保険診療施設協議会の開設者委員会の代表として参加しました。このサミットは、全国から集まった国保診療施設(病院・診療所)の開設者である首長や院長・医師の皆さんとの意見交換の場です。今年のテーマは「人口減少地域の生活を守る~都市部の未来は今の地方にある~」でした。国民皆保険制度の下、全国の市町村が運営する病院や診療所の大半は、経営の悪化、都市偏在を原因とする医師など医療従事者の不足、地域の高齢化と人口減少にみまわれています。総務省の発表によると、2024年の全国の公立病院の83%が赤字経営であるとのことでした。発言者の首長さんたちからは、地域の命を守るために存続をかけた様々な取り組みが発表されましたが、どの自治体も経営悪化のため多額の繰り入れが必要となっており危機感迫るものでした。今回のサミットのテーマは、『今の地方の現実がやがて都市部でも起こる』という皮肉を込めた意味なのか、『地方の医療を立て直さないと都市部の未来が明るいものにならない』という未来志向の主張なのか意見が分かれるところでしたが、私は後者の考え方を支持したいと発言してまいりました。
次に「日本で最も美しい村」連合が設立されて20年がたち「美しい村20周年記念大会」に参加して感じたことです。連合の提唱する理念のもと村づくりの基本精神として進めてきましたが、東白川村にとって良かったかどうか原点に立ち返り考え直す時期であると考えます。すなわち、いま進めている各事業のそれぞれの検証が必要ですが、現時点の私の考え方を記します。
景観保全、環境保全、学び合い事業、暦くらす事業、がんばる地域づくり補助金などの事業は手前味噌ですが素晴らしい効果が上がっていると思っていますので継続していくべきと考えています。しかし「美しい村づくり委員会」の在り方については、移住してきていただいた方々の参加が多いことはありがたいのですが、村づくりの方向や新しい住民活動を立ち上げるなど何かを進めていく組織としては中途半端になっていると思いますので再考すべきと考えています。
私は、この東白川村に住み続けていただく皆さんの誇りと精神的支柱を醸成したくて「美しい村づくり事業」を継続してきましたが、任期中の最後の仕上げの事業として「東白川村 自然と共生する美しい村づくり条例」(仮称)を提案して議論をしていただき、環境保全がますます重要となって来ている現代に合った村づくりの基本を示してまいりたいと考えております。
インフルエンザの流行も危惧されています。うがいや手洗いをしっかり行い感染防止にご留意ください。
令和7年11月
東白川村長 今井俊郎