くらし 【特集】沼津の海岸を楽しみながら守る(2)

■ごみを拾いながら見つけた『キレイ』
狩野川河口南に位置し、駿河湾を一望できる我入道海岸。海辺で釣りをしたりパラセーリングを楽しんだりする人の姿がありました。
その海岸で、ごみを拾いながらビーチコーミングを楽しむ長谷川さんにお話を聞きました。長谷川さんは「UMI by MAASA」という名前で活動するアーティストです。
「ほら、これがシーグラスですよ」と長谷川さんが拾って見せてくれたのは、色鮮やかな欠片たち。海岸に漂着したガラスの欠片は「シーグラス」と呼ばれ、色も形も様々です。「ビーチコーミング」は、シーグラスや貝殻など海岸に流れ着いた漂着物を集めたり加工したりして楽しむこと。長谷川さんは、海岸で拾ったシーグラスを使ってアクセサリーを制作しています。
海が好きな長谷川さんは、海岸がきれいになったらいいと、仲間たちと集まって海岸清掃をしていたそうです。拾うごみの中には、色とりどりの陶器やガラスの欠片がありました。波に揉もまれて丸みを帯び、どこか神秘的な欠片たちに惹きつけられてシーグラスを集め始めました。
「『沼津の海ってきれいだね』って言う人が増えるのは嬉しいですね」と長谷川さんは言います。「でも実際に歩いてみると、ごみがあってきれいじゃない海岸もある。シーグラスって元は流れ着いたごみだけど、楽しみながら一つでも二つでも拾うという『ちょっとのこと』を重ねていくことがいいかな」と考えて、ごみ拾いを続けているそうです。
そして、「ごみは仲間たちと拾ってもいいし、一人だっていい。特別な道具を持たなくてもいいし、音楽を聴きながらでも、子供と散歩しながら拾ってもいい。そうやって、『ちょっとちょっと』拾ってくれる人が少しでも増えてくれたらいいですね」と笑顔で話してくれました。
思い思いのスタイルで、楽しみを見つけながら、海岸のごみを拾ってみませんか。

■~海を感じる作品展~ 海からの贈りもの展 vol.10
長谷川さんの作品も出展
海好きなアーティスト18組による、海を感じる作品が大集合!
海をモチーフにしたバッグ、皿などのほか、貝殻やシーグラスを使用したアクセサリーなど、アップサイクル(捨てられる材料から価値を高めた新しい製品を作ること)の作品も展示します。
日時:6月7日(土)・8日(日)
時間:10時~16時
場所:ギャラリーomusubi(おむすび)(内浦三津)
※当日、直接会場へどうぞ。
※詳細は、インスタグラム(本紙またはPDF版に掲載の二次元コードをご利用ください)をご覧ください。

問合せ:OKUSURUGA(おくするが) BOARD(ボード) 齋(さい)さん
【電話】090-4238-7747

■できる活動を一つずつ
「海岸がきれいだと、人だけでなく鳥もうれしいんですよ」と話してくれたのは、日本野鳥の会沼津支部の鈴木さんです。
沼津には様々な種類の鳥がいて、海岸ではユリカモメやオオセグロカモメといったカモメの仲間やカワウやカルガモ、トンビなどが見られるそうです。
会では野鳥の観察とあわせて、海岸や堤防に落ちている釣り糸や釣り針を拾う活動をしています。「鳥たちにとって、釣り糸や釣り針は脅威です。釣り糸が鳥の足や首に引っ掛かって絡まると飛んだり歩いたりできなくなって、最悪の場合、死に至ってしまいます。釣り針が付いたままの糸もたくさん落ちているので、とても危ないんです」と鈴木さんは顔を曇らせます。
この日は沼津港付近で行われた釣り糸拾いの活動を案内してもらいました。ナイロンなどの化学繊維でできた釣り糸は細くて丈夫。草に絡まった釣り糸を拾おうと引っ張ってみても抜けず、指に食い込んでしまうほどです。
参加者は地面の釣り糸に目を配りながら、双眼鏡で鳥の姿を観察したり鳴き声が聞こえた方角に目を凝らしたりと思い思いに楽しんでいました。参加者からは「多くの釣り人はマナーを守って楽しまれていると思いますが、放置された釣り糸や釣り針の危険性をもっと知ってもらって、必ず持ち帰るようにしてほしいですね」という声も聞かれました。
「色々な鳥を見つけて生態を知るのは面白いですよ。海岸のごみ拾いなど、私たちにできることをするのは、自然への恩返しだと思って続けています」と話す鈴木さんが指差す先には、2羽のカワラヒワが松林を飛んでいく姿がありました。

■住みよいまちに!活動募集中
市では、自治会や企業などの団体や個人が、公共性の高い場所でボランティアとして行う清掃活動をサポートしています。
海岸はもちろん、公園や道路などの場所で行われる、沼津市を住みやすくきれいにするための活動に対し、ごみや草木等を入れるごみ袋の提供、集積したごみの収集をします。
回収対象:海岸・道路・公園等のごみや草木など
申込方法:市ホームページにある実施計画書を直接、郵送、メールまたはファクスで
『広報ぬまづ』で検索
※不法投棄物(タイヤ・家電・家具・ブロック・漁業用浮きなど)や流木は収集できません。
※詳細は、市ホームページをご覧ください。

申込み・問合せ:地域自治課
【電話】055-934-4716

■海岸をこれからもきれいに
海岸は、沼津に暮らす私たちの生活と強く結びついています。遊びや学び、憩いの場として、また、ロマンチックな風景として、海岸は沼津ならではの景色を作り出していると言っても過言ではありません。
今回の特集では、美しい海岸を未来につなごうと清掃活動に取り組んでいる皆さんを紹介しました。
市では、県内でも長い海岸線を有するまちとして、市民の皆さんの自発的な活動を支援し、海岸環境を持続的に保全する施策に取り組んでいます。海岸清掃に関する情報発信の支援や、ボランティア団体・企業・自治会等と連携した一斉清掃活動を行うことはその一例です。また、堆積していく流草木を効率的に撤去するため、新たなビーチクリーナーの導入や、貸出用クローラー配備の準備も進めています。
世界は海でつながっています。海岸は世界への入口と言えるかもしれません。沼津の海岸をきれいにしようという一人ひとりのちょっとした心掛けが、世界の海の豊かさを守ることにつながっていくのではないでしょうか。
まずは、足元のごみを一つ拾うことから。海岸に出かけたら、あなたもやってみませんか。

問合せ:水産海浜課
【電話】055-934-4753