- 発行日 :
- 自治体名 : 静岡県島田市
- 広報紙名 : 広報しまだ 2025年6月号
染谷絹代(そめやきぬよ)市長が自ら、市政運営の方針を分かりやすくお伝えします。
今月のテーマ:自治会という、小さくて大きな力
■地域やあなたの支えになる自治会
「自治会なんていらない」そんな声を耳にすることがあります。人口減少、少子高齢化や、核家族化による社会情勢の変化、さらにはテクノロジーの進化等々により便利になった現代社会においては、顔を合わせなくても暮らしが成り立つようになり、地域との『つながり』は、なくても困らないと考える人が増えたように思います。けれども、「いざ災害が起きたとき」「子どもが道で困っていたとき」「高齢者がひとりで悩みを抱えて孤立していたとき」手を差し伸べるのは、生成AIでもスマホでもありません。結局のところ、「近くにいる誰か」です。今月は、自治会についてご一緒に考えてみたいと思います。
最近は、どこの自治会でも「役員のなり手がいない」が最大の困りごとになっています。役員になれば、隣組長会議や行事の準備などに手間も時間もかかります。それでも地域のために引き受けてくださる人がいて、住民の『見えない支え』となり、安全安心のよりどころになっていると私は考えます。防災、防犯、見守り、子育て支援等々、自治会の活動は、どれも「誰かの暮らしを守る」ためのものです。そしてそれは、巡り巡って自分自身の暮らしを守ることにもつながります。
■人との架け橋となる自治会の役割
「自治会がなくても困らない」そう思えるのは、今まで誰かが支えてきてくれたから。その『誰か』がいなくなったとき、私たちは初めてそのありがたさに気づくのかもしれません。自治会活動は、単なる義務ではなく、未来の安心をつくる『投資』です。便利さの裏にある孤立に気づいた時、私たちはきっと思うはずです。「やっぱり、地域のつながりって、あったほうがいい」と。特に若い世代は、「自治会なんて必要ない」「面倒くさいし、自分には関係ない」そう考える方が増えているように思います。確かに、地域の行事や清掃活動、防災訓練など、どれも地味で、昔の感覚から抜け出せていない活動に見えるかもしれません。でも、ちょっと立ち止まって考えてほしいのです。もし、災害が起きたら?道で倒れている人がいたら?不審者が出たら?子どもやお年寄りが困っていたら?そんなとき、頼れるのは誰でしょうか。近くに住む人たちとの『つながり』が、実は一番頼りになるセーフティネットになります。自治会は、それを日常の生活の中で少しずつ育てている場なのです。
また、自治会は『古い組織』ではなく、『変われる組織』です。むしろ今、若い方々の力が必要とされています。無理に会合に出てくださいとは言いません。まずはイベントに参加するだけでもいい。手伝える範囲でいい。関心をもってもらえませんか。地域の未来を、傍観者ではなく『担い手』として創っていく。そんな生き方も、悪くないと思ってもらえたらうれしいです。すでに幾つかの自治会は、回覧板をLINEで配信したり、役員会をリモートで開催したりするなど、デジタル化が進んでいます。視点を変えると、「自治会は、地域と行政をつなぐ『かけ橋』である」とも言えます。人口減少や少子高齢化が進む中、行政がすべての地域の隅々にまで目を届かせるのは、年々難しくなっています。だからこそ、今、自治会の存在がますます重要になっているのです。自治会は、単なる地域の『寄り合い』ではありません。地域住民の声を行政に届ける、いわば『最前線の窓口』です。
■変化に適応した自治会の未来の形
防災・防犯・福祉・子育て・環境美化など自治会を通じて、住民と行政が連携することで、より実効性のある政策が実現されてきました。例えば、高齢者の見守り事業、防災訓練の実施や災害時の避難所運営、こうした『住民の最後の砦(とりで)』の多くは、自治会の存在なしには成り立ちません。
もちろん、自治会にも課題はあります。役員のなり手不足や、活動のマンネリ化等々。しかし、こうした課題を行政と共有し、柔軟に協力していくことで、自治会は新たな形に生まれ変わることができます。「地域に何かあったとき、すぐに相談できるところがある」その安心感をつくるのが、行政と自治会の『パートナーシップ』です。自治会は、『地域自治』の原点であり、極めて重要な組織です。行政と住民の架け橋だからこそ、今あらためて、自治会を支え、活かす仕組みが求められています。「いらない」ではなく、「どうすれば今後も続けられるか」を、今こそ一緒に考えたいです。
問合せ:秘書課
【電話】36-7117