くらし 市政羅針盤(らしんばん)

染谷絹代(そめやきぬよ)市長が自ら、市政運営の方針を分かりやすくお伝えします。
今月のテーマ:安心をみんなでつくる 災害に強いまちをめざして

■想定外が頻発する昨今の災害
9月5日、台風15号の影響で島田市上空に線状降水帯が発生し、わずか1〜2時間のうちに最大時間雨量120mmを超える猛烈な雨が降りました。道路冠水や住宅の浸水、土砂崩れなどが相次ぎ、改めて水害の恐ろしさを痛感。私たちの暮らしは、美しい自然と豊かな河川に支えられている一方で、常に水害リスクと隣り合わせにあります。気候変動の影響によって「想定外」では済まされない災害が頻発する今、市民の皆さんと力を合わせ、災害に強いまちを築くことが何より重要な課題です。

■防災の基本「自助・共助・公助」
防災の基本は「自助・共助・公助」です。まずは、自分や家族の命を守る「自助」。非常持ち出し袋の準備、家具の固定、避難経路の確認はできているでしょうか。本市では、家庭ごとに避難のタイミングや行き先を定める「マイ・タイムライン(わたしの避難計画)」の作成を呼びかけています。高齢者や小さな子どもがいる家庭など、それぞれの事情に合わせた避難計画を立てることで、いざという時の迷いや遅れを防げます。気象情報や河川情報を基に、「この状態になったら避難する」という“わが家の避難スイッチ”を決めておくことも大切です。
次に大切なのが、地域の支え合いである「共助」です。災害時に本当に頼りになるのは、「近くにいる人」の力です。高齢者や障害のある方、子どもなど、避難に支援が必要な人をどう助けるか、平時から声を掛け合い、顔の見える関係を築いておくことが命を守ることにつながります。防災は特別な人の仕事ではなく、誰もが担い手になれるもの。世代を超えたつながりこそが、災害に強い地域を育てます。
三つ目は、行政の役割である「公助」です。市では、防災拠点となる公共施設の耐震化や避難所の環境改善、河川・水路の整備を計画的に進めています。また、デジタル技術を活用し、スマートフォンアプリやSNSを通じて避難所の開設状況や河川水位をリアルタイムでお知らせする仕組みを整えています。さらに、コミュニティFM放送局「FM島田」と連携し、市内の被災情報や避難所情報をきめ細かく発信できる体制を構築しています。

■防災に備える市と地域、個人の取り組み
本市ではこれまで、住宅の耐震化支援や、倒壊から命を守るための耐震シェルター・防災ベッド設置への補助を行ってきました。昨年度からは、自主防災組織による井戸掘削費用の補助や、災害時協力井戸の登録制度を新たに開始し、災害対応力の底上げを図っています。さらに、すべての市民に正確な防災情報を迅速に届けるため、同報無線のデジタル化も令和8年度から進めていきます。
一方で、南海トラフ地震など大規模地震への備えも待ったなしの課題です。発生直後の数分が命を左右します。まずは「揺れたらまず身を守る」行動を習慣化し、家庭では家具の転倒防止や耐震補強を進めましょう。食料や水、常備薬を少し多めに備え、使いながら補充する「ローリングストック法」も有効です。家族で集合場所や安否確認の方法を話し合い、避難生活が長期化した際の備えも整えておきましょう。防災は特別なことではなく、日常の延長にあります。買い物のついでに水や食料を少し多めに備える、家族で避難の話をする。そうした小さな一歩が、大切な命を守ります。こうした取り組みをさらに強化するため、令和8年度から、専任の防災支援員(アドバイザー)を市内の自主防災組織や地域コミュニティに派遣し、地域課題に即した助言や指導・育成を行うことを考えています。防災講座(出前講座)、防災訓練の企画支援、防災マップの作成、避難所運営の助言など、地域防災力の向上をきめ細かく支援する専門のアドバイザーです。今年度中も、防災支援員が各自治会・町内会に出向き、自主防災組織や地域団体の防災意識向上をお手伝いしますので、ぜひご相談ください。

■災害に強いまちづくりに必要なそれぞれの役割
「自助」「共助」「公助」がかみ合ったとき、初めて災害に強いまちが実現します。そのためには、市民と行政が日頃から防災について語り合い、信頼を築くことが何より大切です。本市はこれからも「命を守る防災」「誰一人取り残さない避難体制」「共助・公助の連携」を柱に、市民の皆さんとともに災害に強いまちづくりを進めてまいります。

問合せ:秘書課
【電話】36-7117