くらし こんにちは、市長です

■「勇気」のスピーチ
今回は、勇気についてのお話です。
大正時代の小説に「君たちはどう生きるか」(山本有三作)がある。数年前にマンガ化され一大ブームとなり、さらに宮崎駿がこれをオマージュしてジブリ映画をつくったところアカデミー賞となり、たいへん話題になった。これらに共通しているのが「勇気」だ、と勇気のない私は思っている。
勇気といえば、昨年のハーバード大の卒業式で、私たちと同じアジア系有色人種の女性による首席スピーチは圧巻であった。タイトルは「知らない力(The Power of Not Knowing)」。
「私たちは〝知っている〟ことを増やすために大学に来たが、〝知らない〟ということこそを大切にすべきではないか」、という考えを軸に、ガザ地区の戦闘や人種差別など、現在のアメリカが抱える数多くの問題を的確に突いた、健全な批判的演説であった。
大学側には耳の痛いものばかりだったであろうし、アメリカ社会全般への挑戦のようでもあり、彼女の未来へのリスクはいかばかりか、と正直そう思った。
しかし、それでも彼女は信念に基づいてキッパリと言った。
「〝知らない〟ということは、他者の意見に耳を傾けることにつながるし、共感や学ぼうとする意志を生む力になる」、「不確実性が増す社会の中で、私たちは〝何を知らないか〟を大切にして、勇気と倫理観を持ってそこに飛び込むべきだ」と。彼女の勇気ある言動に、私は、神聖な感動を覚えるとともに少なからず影響を受けたのだ。
加速度的に進む少子高齢化、急激な物価高騰や相互関税リスク、AIの急速な進化とそれに伴う新たなリスク、さらには南海トラフ巨大地震等自然災害の脅威などなど。今、私たちの前にはたくさんの未知なる課題が立ちふさがり、その上にまた新たな問題が次々と生まれている。まさしく、〝知らない〟ことばかりだ。
しかし私は、これらの危機に立ち向かおうと思う。
皆さんと勇気を合わせて。