- 発行日 :
- 自治体名 : 愛知県田原市
- 広報紙名 : 広報たはら 令和7年11月号
■渥美半島にあまりゆかりがない戦争の慰霊碑の話
渥美半島には、戦争で亡くなった方を慰霊する石碑が各地にあります。今回は、地元とは直接のゆかりが薄い慰霊碑をご紹介します。
伊良湖の恋路ヶ浜駐車場から歩いて岬の灯台へ向かうと、すぐ山側に石碑が見えてきます。こちらは「全国海洋戦没者伊良湖慰霊碑」といい、太平洋戦争のため海で亡くなった全ての方への慰霊碑です。日本海軍最後の連合艦隊司令長官であった小沢治三郎(1886~1966)の逝去に際し、昭和天皇から下かし賜された祭祀(さいし)料を基金とし、さらに全国から寄付を募って1972(昭和47)年に建立されました。かつては、毎年多くの元軍人や遺族が参列し、盛大な慰霊祭が行われていたそうです。
また、蔵王山の中腹には「工兵二十六観音」と呼ばれる観音様の石像と石碑があります。フィリピン・レイテ島で壊滅した陸軍の工兵第二十六連隊の戦没した方々を慰霊するために造られました。同連隊も東京で編成され、フィリピン派遣以前は中国を転戦していたため、渥美半島と縁が深いわけではありません。
これらの慰霊碑が渥美半島に建てられたのは、南方の島々や海で亡くなった戦没者の霊を、現地に行けないまでも、せめて戦没の地につながる外洋を望む場所で慰めたいという思いがあったからなのでしょう。
現在は関係者による慰霊祭は既に休止し、地元の方々が引き継いで供養を続けています。戦後80年の時の経過を感じさせる光景です。
(学芸員 木村洋介)
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