くらし 津市(このまち)で輝く vol.102

◆10年、50年と時を経て写真の持つ力が花開く瞬間がある
自分の家族を被写体にしたユニークな写真集「浅田家」で知られる浅田さんは、人気ドラマや世界的企業の広告ビジュアルも手掛ける、日本を代表する写真家だ。
写真家としての転機になったと振り返るのは、津波で汚れた写真を洗浄するボランティアに参加した、東日本大震災。大切な人をなくし、衣食住が脅かされる中で“写真を見たい”という思いが溢れていた。何気ない日常を切り取った写真が、一枚、また一枚と大切に持ち帰られていく。その光景に、感じたことのなかった写真の力を見たという。
写真のデータ保管が一般的となった現代だが、浅田さんは「写真はプリントして、アルバムや額に入れて、見返してほしい」と話す。「お母さんが撮った赤ちゃんの写真を、ウェディングムービーとして式場で流したり、晩年の病室で思いを馳せたりするかもしれない。写真はさまざまな出来事と結び付き、見るタイミングによって意味を変えます。カメラに収めた時ではなく、目にした時に写真の力が花開くのだと思います」
自身の半生を描いた映画『浅田家!』が公開されたその年、写真家としての拠点を故郷・津市に移した。月の半分は全国を飛び回る多忙な日々に、「三重からは東西南北どこへも行きやすいし、仲間がいる地元は心強い」と笑う。目標は80歳になっても、愛する津市でシャッターを切り続けることだ。

写真家 浅田(あさだ) 政志(まさし)さん
1979年津市生まれ。津工業高校、日本写真映像専門学校を経て東京で活動。2009年、写真集「浅田家」で第34回木村伊兵衛写真賞受賞。2020年、「浅田家」「アルバムのチカラ」を原案とした映画『浅田家!』が公開。趣味はガーデニング。
・“家族”をテーマに写真を撮り続けて四半世紀
・サインにも津市愛があふれる!
※詳しくは本紙をご覧ください。