- 発行日 :
- 自治体名 : 三重県鳥羽市
- 広報紙名 : 広報とば 令和7年5月1日号
■~紅藻エゴノリ~
ずっと探している海藻がいくつかあり、そのひとつにイギス目の紅藻エゴノリがある。何年も前に小浜町の80代の漁師と話していると、「この辺に昔、『いぎりす』って海藻があって、こんにゃくみたいにして食べてたんや。」と。「いぎりす」はおそらく、イギスかエゴノリのことを指していると思われる。記録では1998年に日向島(イルカ島)で採取されたとあるが、僕が鳥羽の海で潜るようになった2009年以降目にしたことはない。さらにその老漁師に聞くと、小浜では広畑の入江、まだ砂浜も残されていた小浜漁港内などに生えていたとのこと。
この海藻は鳥取県や長崎県、瀬戸内地域などの地方で食べられている。乾燥させた本海藻やイギスの仲間を煮溶かして固めたものを「いぎす」「いぎりす」「おきゅうと」などと呼んでおり、かつては朝廷への献上品とされていた伝統食材である。しかし、鳥羽を含む三重県の郷土料理として聞いたことがなかったので、「いぎりすを食べていた」という言に俄然探索意欲が沸き上がった。
エゴノリは、ホンダワラの仲間の海藻に絡みつくようにして生えている。小浜海域でも他の海域でも見つからず、探すのも諦めかけていたところ、この3月、うちの若手職員が広畑の浜に打ち上がっている新鮮な個体を発見した。この時期の潮流や流れ込み具合などを考えると、小浜界隈に生えている可能性が高そう。やはりしっかり探さなくてはならないだろう。藻体探索は我々が行うとして、これを「こんにゃくのようにして」食べていたという思い出をお持ちのかた、またそのようなかたをご存知のかたは研究所に一報いただきたい。
問合せ:水産研究所
【電話】25-3316