文化 芭蕉翁記念館だより

江戸時代は、出版が広く普及した時代です。芭蕉さんたちが全国各地に仲間を増やすことができたのは、出版によって自分たちの作品を世の中に広めることができたおかげです。ところで、こうした俳諧の本は、どのように作られていたのでしょうか。
俳諧の本は、歳時記など売り物として出版されるものもありますが、多くは仲間内の作品を集めて編集した本(撰集(せんじゅう))で、出版費用も仲間内で負担しあっていました。今でいう私家版です。
できあがった撰集は、基本的には仲間内に配られておしまいですが、一般の読者にも売れそうであれば、本屋(当時は出版社であり小売りの本屋でもあった)は店先に並べて売ることができました。この時代、販売の権利は、版木を持っている本屋にあったのです。芭蕉さんたちの撰集は、江戸時代を通じてよく売れたので、版木の価値が高く、本屋同士で売買もされました。
一方、著作権という考えはまだなかったため、その本が店先で売れても本屋が儲(もう)かるだけで、芭蕉さんたちにはお金は入りませんでした。現代の感覚ではちょっと残念な話ですが、江戸時代にはこれが普通だったのです。

◆芭蕉翁記念館企画展
「江戸時代の出版と芭蕉」開催中
6月15日(日)まで

◆ワークショップ江戸時代の本をつくろう!
5月5日(月・祝)
午後1時30分~2時30分
小学生以上対象、先着30人、申込不要(要入館料)

◆ギャラリートーク
6月7日(土)
午後1時30分~(要入館料)

問合せ:
・文化振興課【電話】22-9621【FAX】22-9619
・芭蕉翁記念館【電話】21-2219