- 発行日 :
- 自治体名 : 滋賀県守山市
- 広報紙名 : 広報もりやま 令和7年6月15日号
■制作スタイルの変化に伴って生まれた新たな絵画表現
佐川美術館
学芸員:上村 友理(うえむらゆり)
陽射(ひざ)しが強くなり、木々の緑を透かして落ちる影も色濃くなってきました。この時期、外を歩いていると、ふと感じる光や影が作り出す色に彩られた自然の美しさにハッとすることがあります。美しい自然の光景を一幅の絵画のようと例える言葉がありますが、まさしくそうした自然の景観を描く絵画分野として、風景画があります。風景を描くと聞けば、外へ出て直接自然を観察して描く姿を想像されると思いますが、戸外で直接作品を制作する(スケッチを除く)スタイルが浸透し始めたのは19世紀に入ってからと、比較的最近の話です。
19世紀後半のフランス、当時は革新的な描き方で批判を浴びながらも、現代に続く絵画表現の幅を拡げた画家たちがいます。印象派と呼ばれた彼らは、アトリエでの制作が主流の時代に戸外での制作に取り組みました。自身が見た光景から得た印象を重視、時に奔放(ほんぽう)な筆致、大胆な色彩で生きている時代を写す作品を描き出し、世間に衝撃を与えます。印象派という名称の由来となった作品を描き、睡蓮(すいれん)の連作で知られるクロード・モネ(1840-1926)も、最初は酷評されましたが、彼らが追求した表現は徐々に受け入れられ、多くの画家に影響を与えると同時に、新たな表現の流れを作り出していきました。
ちょうど今は、モネも描いた睡蓮が見頃の季節。現代につながる先駆けとなった当時の現代アート・印象派が描いた風景画の作品を想(おも)い描きながら、自然散策してみるのはいかがでしょう。
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