くらし 〔Column〕生きる

■「治らない病気」は何が大変なのか
◇完治が困難な病気と共に生きていく
小学校の教師だったころの私は、病気は治療を受ければ治ると思っていました。しかし、実際は単純明快な病気の方が少なく、一般的に難病や慢性疾患と呼ばれる「完治が困難な病気」と共に生きている人は多くいます。特に前者について多くの人が持つイメージは、怖くてつらい症状が進行して最終的には命も奪われる、というものでしょうか。しかし、現実にはそんな特徴を持った病気すらごく一部。多くの人は病気の体と折り合いをつけ、さまざまな困難と向き合いながら日々を過ごしています。
私は経験上、「困難」を大きく分けると三つと考えています。一つ目は、病気の症状から生じる困難です。薬などを使うとある程度は抑え込めますが、日々の症状には波があり、自分の体なのに思うように働いてくれません。二つ目は、社会生活を送る上で生じる困難です。病気は見た目にはとても分かりにくい代物です。特に仕事や学校生活など、他者と関わるときには、周りに合わせて我慢するか、周囲に困りごとを説明して理解を求めるか、という二者択一を常に迫られています。三つ目は経済的困難です。他の人と同じようには働けないのに、医療費や少なくなった体力をカバーするためのお金が健康だったときの何倍もかかってしまうのです。
社会は基本的に「健康で一日8時間元気に働ける人」を想定してデザインされており、それがこれらのさまざまな困難につながっているのではないかと私は思っています。
NPO法人大阪難病連事務局長 尾下葉子

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