くらし 【新春鼎談2026】未来への提案 公民共創で拓く未来のまちづくり(2)

■災害時の備え強化 技術と備蓄による安心の提供
岩波社長:当社は、高いすべり特性を持つ高性能な免震装置を自社開発・製造しています。建て替えられた三田工場の管理棟にも設置しました。このレジリエンス(※3)の高い工場を、大規模災害時には「一時避難所」として地域のみなさんに開放することを地域貢献策として考えています。社員向けに備蓄している非常食や物資も提供します。有事の際の貢献は、企業の社会的責任だと考えます。阪神・淡路大震災の際に、神戸の企業が迅速に工場を避難所として開放したことで、今なお地域から深い信頼を得ている事例を参考に、迅速な現場判断の重要性を組織全体で共有しています。
北社長:当社は災害対応を「務め仕事」と捉えており、東日本大震災ではグループで約1万1千戸、能登半島地震では約1千2百戸の応急仮設住宅を建設しました。重要なのは、「災害が起きてからでは遅い」ということです。当社は平時から4百戸分の応急仮設住宅のリース部材を自社単独で備蓄しています。また、自治体と協力して平時から建設予定地や必要戸数を計画しておく「事前計画」は重要であると考えます。

■未来への投資―企業と地域が育む人財・独自の「働きがい」の取り組み
岩波社長:当社は2年前に三田工場にイノベーションセンターを設立し、約2百人の技術者を集約しました。ここを拠点に、次世代半導体や水素といった未来市場に向けた「総合知の創出」を目指しています。人財育成では、神戸大学や九州大学などに社員を派遣し、専門性を高める取り組みを実施しています。また、トライやる・ウィークやインターンシップにより地域の子どもたちや若者を積極的に受け入れています。地元の中高生に「世界で使われている製品が、この三田で製造されている」と伝えることは、社員のプライド醸成と将来的な人財確保に繋がる重要な活動です。
北社長:当社では18年前に多様な働き方を支援するプロジェクトを立ち上げました。2023年に新設した独自の制度として「サンキューペイ制度」があります。これは、育児休業を取得した社員の業務をカバーした同僚に対し、インセンティブ(※4)を支給する制度です。これにより、休む側と支える側の双方に配慮し、納得性の高い職場環境を構築しています。育児短時間勤務に関しても、当社では18歳までとしています。このような制度を設けることで社員のエンゲージメント(※5)向上に努めています。また、採用時に学生時代のボランティア経験を重視するなど、協調性や課題発見力を持つ人財を確保しています。三田市でも、若い人たちが、ボランティアを経験できるようなフィールドを作ってもらいたいと思います。
市長:先見性のある取り組みに感服します。私が目指す「学びのまち」へと通じる、産官学連携の可能性も感じました。また、働きやすく魅力的な企業が地域に存在することは、地域外からの移住や若者の定着など人財の循環を促し、まちの活力や魅力向上にもつながります。

■変革のリーダーシップ論
北社長:リーダーの務めとは、社会や行政から「あの会社でなければできない」と必要とされる「唯一無二の存在」の組織を目指すことだと考えています。大阪・関西万博の大屋根リングの植栽事業のような困難な事業に挑戦し実現することが、企業の誇りと社会的存在価値を高めると思います。
岩波社長:変化の激しい現代では、トップダウンだけでなく現場でのリーダーシップが重要です。私は、施策の背景や目的を丁寧に説明し、チーム全体の「納得性」を醸成すること、そして、積極的な「権限移譲」を進めることで、スピーディーに正しい判断を促すリーダーを目指しています
市長:山積する諸課題に対して、リーダーとして関係者からの声を常に聴き、全てを常に考え、即断即決で応えること。これが停滞を打破し、物事を前に進めるための私の信条です。

■未来への提案―課題の「見える化」と「マッチング」
北社長:行政と民間の間には「情報の壁」が依然として存在します。民間企業からは、行政が「どこで、どのような課題を抱え、何を求めているのか」が見えにくい。このミスマッチが連携の機会を阻害しています。私は、行政と民間企業を繋ぐ「プラットフォーム(※6)」の構築を提案したいと考えています。このようなプラットフォームが実現すれば、双方がよりスピード感をもって取り組むことが可能になる。まずは、その基盤となるDX化が重要であると考えます。
岩波社長:私もそうだと思います。地域の活性化が地域内の企業の活力にも直結します。そのためには、民間企業の強みと行政課題の密なマッチングが重要です。行政の課題やニーズを「見える化」することで、当社の免震技術や水害対策技術といった具体的なソリューション(※7)を提案しやすくなります。市と民間企業の連携をさらに深めることが必要です。三田市が再び移住者を迎え入れる市として、さらに発展していくことを期待しています。
市長:市が抱える課題やニーズをオープンにすることで、企業からの革新的な提案や協力を引き出し、公民連携から公民共創へさらに加速させる鍵となります。この考えを組織全体に浸透させ、組織文化として根付かせていく必要があります。また、市が取り組みを進めたい事業や直面している問題を「見える化」することで、「企業から声をかけてもらえる自治体」を目指してまいります。

■公民連携とは?
公民連携とは、「行政と民間事業者がそれぞれの強みを生かして協力し、社会課題の解決を目指す取り組み」のことです。日本において、少子高齢化や人口減少などが進む中、「公民連携」による地域の課題解決と活性化を目指します。
▽連携協定
企業の持つノウハウやサービスを生かすことで地域課題の解決などを目指す
▽災害時応援協定
大規模災害発生時の迅速な支援物資やサービスなどの提供を目指す

※3…レジリエンスとは、回復力・弾力性・復元力などの意味。ここでは、企業が有事の際に事業を継続・復旧するための強靭(きょうじん)性のこと
※4…インセンティブとは、刺激・動機付けなどの意味。ここでは、働く意欲を増幅させる外的要因のこと
※5…エンゲージメントとは、元は婚約・契約などの意味。ここでは、組織や仕事に対して抱く愛着や貢献意欲のこと
※6…プラットフォームとは、元は足場や討論の場などの意味。ここでは、複数の事業主体をつなぐ枠組みや基盤、仕組みなどのこと
※7…ソリューションとは、解決・解答などの意味。ここでは、課題解決のための技術や知見などのこと