くらし 人権一口メモ No.282

■「公正」を考える
先日、東洋大学の高史明教授から「公正」について学ぶ機会がありました。「分配的公正の三基準」についてお話があり、とても良い学びとなりましたので、ご紹介します。
分配的公正の基準は、(1)平衡基準(2)平等基準(3)必要性基準の三つだそうです。

(1)の平衡基準とは、「入力に応じた出力」を意味します。例えば、営業成績に応じて出来高給を支払い、つり合いをとるといった内容です。
(2)の平等基準とは、「平等な分配」を意味します。例えば、基本的人権は、全ての人が生まれながらにしてもつ権利です。
(3)の必要性基準とは、「必要な者への分配」を意味します。例えば、福祉や医療の制度などがイメージしやすいと思います。
ここで大事なのは、「あらゆる場面で完璧に適用できる基準はない」ということです。そして、時折、不適切な基準を当てはめて判断してしまい、差別につながる事案が起こっています。

例えば、優先座席は、「必要性基準」に基づいた制度です。そこに、「平衡基準」を当てはめてしまうと、「妊婦や高齢者より、私の方が税金を払っているから、席を譲らなければならないのは、おかしい。妊婦特権・高齢者特権だ」という歪んだ主張となります。このことは、女性専用車両や性的少数者、在日外国人、障害者雇用など、さまざまな議論の場で起こっています。
また、子育てや教育の場において、安易に平衡基準的なルールに従わせてしまうことがあります。「働かざる者食うべからず」「義務を果たさない者に権利なし」これらは大切な教えですが、あらゆる場面に適用できる普遍的な道徳的原理ではないことも心に留めておきたいものです。

世の中の制度や少数派を対象とした仕組みは、どの公正基準に基づいたものなのか。そして、その公正基準は、世の中に正しく理解されているのか。一度立ち止まって考えることの大切さを感じた講座でした。

◆「人権文化をすすめる町民運動」啓発活動
太子町民主化推進協議会による人権リーフレット配付活動が、町内店舗で行われました。

問合せ:社会教育課