- 発行日 :
- 自治体名 : 広島県庄原市
- 広報紙名 : 広報しょうばら 2025年4月号(No.241)
開館:9時~17時、
休館:水曜(祝日開館・翌日休館)・年末年始
■庄原市の至宝「神楽面」
(比婆荒神神楽社(ひばこうじんかぐらしゃ)蔵)
写真は、「鬼子王丸(きしおうまる)面」という神楽面です。比婆荒神神楽の演目の中で、鬼子王丸は神功皇后(じんぐうこうごう)らの異国遠征への報復として、数千艘の兵船を引き連れて博多沖へ襲来し、武内宿祢(たけのうちすくね)らと戦います。鬼子王丸面は比婆荒神神楽社が保有する中で、もっとも古いとされる神楽面の一つです。百年以上もの激しい使用による欠損や補修痕が、人々の喜怒哀楽と共に場数を重ねてきた神楽面の誇らしい経歴を語っています。
能舞(のうまい)の舞手にとって、神楽面は自らの身体そのもので、修練を積んだ舞手は神楽面の傾き一つで、神仏の心の内面まで演じます。神楽面は、美しく剥がれにくい鮮やかな塗装、頑丈でしなやかで軽く、しゃべり易い形状など、多くの条件が高度に要求されます。
裏面は、荒々しいノミ痕を残しつつも、視界を広く確保し、鼻や頬に当たらぬよう、桐材を用いて丁寧に仕上げてあり、神楽への敬意や、「用の美」に満ちています。
「比婆荒神神楽」は、昭和54年(1979年)の国の重要無形民俗文化財指定に伴って付けられた文化財名称です。このうち「比婆」は戦前の比婆山顕彰(けんしょう)運動に由来し、「荒神」は戦後の民俗学が当地の荒神・祖霊祭祀(それいさいし)へ注目したことに由来します。当地の神楽の記録は、少なくとも三百年以上前にさかのぼります。最新研究によって、今ある神楽は、神職や神楽社など当事者が、神楽を意味あるものにする努力を重ねた結果であり、世の中の動きに応じた創意と「ブランディング」の継続こそ、神楽の「伝承の原動力」であったことが解明されつつあります。
■引用図書
(1)…『東城町史』第一巻(自然環境考古民俗資料編)1996年
(2)…『比婆荒神神楽の社会史』鈴木昴太2025年
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