- 発行日 :
- 自治体名 : 広島県庄原市
- 広報紙名 : 広報しょうばら 2025年8月号(No.245)
~愛と平和のメッセージ~
広島に原子爆弾が投下されてから80年。今もなお、核兵器をめぐる情勢は混迷を極め、「核兵器のない世界」の実現は、遠のいてすらいると感じられる危機的状況にあります。
核兵器廃絶につながる、出口の見えない暗いトンネルの中、闇を照らす一筋の光となるべく、自らシャッターを切り、切り取った瞬間に「愛と平和」のメッセージを乗せ、世界に向けて発信し続けている、本市出身の写真家・宮角孝雄(みやかくたかお)さんにお話を伺いました。
■写真家 宮角 孝雄(みやかく たかお)
1948年(昭和23年)生まれ。
本市出身で被爆二世。東京を拠点として雑誌やコマーシャルフォトのカメラマンとして活動。
2000年(平成12年)からは原爆ドーム前で人々の肖像を撮ることをライフワークとし、作品を通して世界に愛と平和を訴える活動を続けている。
―この活動を始められたきっかけは?
私は被爆二世であり、家族は被爆者なんです。父と祖父は、家族を庄原に疎開させた後、自分たちも庄原へ疎開しようと広島駅で列車を待っていた時に被爆しました。父と祖父は命を取りとめましたが、父は屋根の下敷きになり、頬を五寸釘が貫通するほどの大けがを負いました。
もう一つは、私の父と教師だった祖父の確執があります。私の祖父は、父には弁護士のような職業についてほしいと考えていましたが、父は仕官して「お国」のために尽くしたいと考えていたそうです。
それに祖父が反対したことで「ずっとお国のために尽くすのが務めだと生徒に言っていたのに、なぜ自分にだけそんなことを言うんだ」と父は反発し、確執ができてしまいました。それは、祖父の名前の「みやかど」を、祖父とは違う「みやかく」と名乗ったほどです。
私は、いずれも、「戦争というものがなければ生じなかっただろう」と思っています。これらが、平和への思いを抱いたきっかけです。
―原爆ドームの前でカップルがキスをしている写真が印象的ですね
私は、平和への思い、特に原爆のことを写真で表現したいと思い、1999年12月31日から2000年1月1日の夕方まで徹夜をして原爆ドームの前で写真を撮っていました。そこへ、平和を求めて自転車で各国を巡り、平和を発信する団体・ピースライドが、1年半かけて40数カ国を巡り、最後、広島から平和を発信しようと、原爆ドームに到着していました。すると、そのメンバーの2人が、プロポーズの後、キスしました。その瞬間をたまたま撮ることができた、いまだに心がうれしくなる写真なんです。「愛と平和」を感じました。
―これらの作品のスタイルについて教えてください
私は、戦場の悲惨な写真のような、1回見ればもう分かったよ、という写真ではなく、日常に接した、誰もが掘り下げられる、心で本当の平和を考えていくような写真が撮れたらいいなと思っているんです。
それで、原爆ドームの前で、目を閉じて平和について考えてもらった瞬間や、キスの瞬間を撮るといった形で表現しています。
「本当に原爆ドームの前でキスの写真を撮っていいの?」と思う人がいるかもしれません。
確かに、ある種の危険性を孕(はら)んでおり、何かの拍子に叩かれたら写真家生命がなくなるかもと、いつも思いながらも、このスタイルを貫いています。
あいさつにキスをするという文化圏もあり「愛情表現」としての側面を強調し、伝えていきたいと思っています。
―あなたが考える「愛と平和」とは
それは、隣人を愛し、相手の気持ちになって自分も考え、尊重することだと思っています。相手を尊重していれば、相手の人が悲しんでいれば、その悲しみがわかるような、自分の心も掘り下げて物事を考えるようになると思います。
この相手を思いやる心があれば、問題が起きても、平和に物事を解決することができるようになり、争いも起きることはないと思います。
国と国がお互いに尊重しあえれば、戦争も決して起きることはないと思っています。
■庄原市非核平和都市宣言
永遠の世界平和の実現は、人類共通の願いです。
しかし今もなお、世界では地域紛争やテロの頻発など、人間の生命の尊厳を踏みにじる行為が繰り返される中で、核の小型化や拡散が進み、世界の平和と人類の生存に深刻な脅威をもたらしています。
庄原市は、世界最初の被爆県の都市として、その惨状と被爆者の苦しみを思い、この地球上で再びヒロシマ・ナガサキの惨禍を繰り返してはならないことを強く全世界に訴えます。
私たち庄原市民は、生命の尊厳と平和の尊さを深く認識し、一刻も早い核兵器の廃絶と永遠の平和を希求し、ここに非核平和都市を宣言します。
平成17年7月1日、本市は、世界最初の被爆県に新しく生まれた都市として、核兵器のない平和で安全な世界を実現するため、議会議決を得て、非核平和都市宣言をしました。
この宣言発出は、核軍縮・核不拡散が国際社会の中で合意に至らず、大量破壊兵器の拡散が続き、世界平和と人類の生存に深刻な脅威がもたらされていたという、核をめぐる当時の国際情勢を背景としています。
この宣言から20年が経過した今もなお、全世界で1万2千発以上の核兵器が保有され、使用されかねない危険性すら高まっています。
二度とあの惨禍が繰り返されることがあってはなりません。本市は、市民の皆さんと共に、生命の尊厳と平和の尊さを深く認識し、世界に向けて「非核平和」を訴え続けていきます。
■庄原市戦没者追悼式並びに平和祈念式典
本市の戦没者に哀悼の意を表し、恒久平和を祈念するため「庄原市戦没者追悼式並びに平和祈念式典」を開催します。
多くの皆さんのご参列をお願いします。(申し込みは不要です)
とき:8月20日(水) 10時~(開場は9時~)
ところ:庄原市民会館 大ホール
その他:
・当日は要約筆記による案内があります。
・職場や家庭などでも黙とうをお願いします。
・8月12日(火)~18日(月)、市役所本庁舎1階市民ホールで折り鶴などを展示します。
・8月21日(木)からは、口和支所、高野支所、比和自治振興センター、東城支所、ウイル西城、総領保健福祉センターの順で、折り鶴などを巡回展示します。
問い合わせ:
社会福祉課社会福祉係【電話】0824-73-1153
または各支所地域振興室
問合せ:総務課総務法制係
【電話】0824-73-1123