健康 うちのお医者さん[193]筋肉は資産

市場町香美笠井整形外科内科クリニック 笠井弘起(かさいひろき)先生
「筋肉は裏切らない」というフレーズを聞いたことはありますでしょうか?
NHK番組「みんなで筋肉体操」で運動生理学者であり順天堂大学教授の谷本道哉先生が言われたとされています。鍛えれば鍛えるほど自信が付き、自分や他人を信じられなくなった人たちに贈る言葉です。
単に体をムキムキにするためだけの格言ではなく、実際に医療の世界でも言えます。筋トレをすることによって筋肉を増加させて体重を増やすこと、骨に対する物理的なストレス、ホルモンの分泌などにより骨は強固になり骨密度の上昇が期待されます。
骨が弱いことの最大のリスクは、胸椎や腰椎の圧迫骨折や足の付け根の大腿骨の骨折です。骨折の原因のほとんどが転倒によるものです。筋トレを継続的に行い、筋肉の鎧をまとうことで転倒リスクの減少、また転倒したとしても筋肉の鎧が体を守ってくれることで骨折を防いでくれます。内服や食事で骨粗しょう症治療をされている方は多いですが、それに加えて運動習慣がある方は有意に骨密度上昇を認めます。
他にも診療していく中で肩や手足、腰の痛みやしびれの患者さんに対してレントゲンやエコー機、MRIなどの精密機械でさんざん調べても原因が特定できないことがありました。診断や治療に難渋していたのですが、患者さんが試しに筋トレを始めたところ、症状が劇的に改善したという方もいらっしゃいました。
筋肉が十分ある人は腰痛、関節痛などが少ないとされています。筋肉の鎧をまとうことで、体重が筋肉にも分散し関節への負担を軽減してくれるからだと考えられます。
整形外科領域の疾患は運動で改善する病態が多々あります。ジムに通えとまでは言いませんが自宅でテレビを見ながらでもできる簡単な筋トレもございますので、どんなトレーニングがいいか考えてみましょう。

このコーナーは阿波市医師会・阿波歯科医師会・板野歯科医師会のご好意により提供いただいた原稿を掲載しています。