イベント アートと記憶をたどる秋

■瀬戸内国際芸術祭2025 秋会期 10月3日(金)~11月9日(日)[38日間]
芸術祭の締めくくりとなる秋会期が、10月3日から開幕します。
新エリアとして宇多津町が仲間入り。暑さがようやく和らぐこの季節、アート散策に出かけましょう。

◯大切なものを忘れないための仕掛けとして作る
かつて広大な塩田が海岸線一帯に広がり、明治時代には「日本一の塩の町」と呼ばれた宇多津町。新たに芸術祭の舞台となるこの町で、塩を使って巨大な模様を描く作家・山本基(もとい)さんが、作品『時を紡ぐ』を出展します。
塩の町として栄えた当時の古い町並みが残る古街(こまち)エリアの一角、登録有形文化財の「倉の館三角邸」の茶室に現れるのは白い渦。その流れは廊下を隔てて和室へと広がり、やがて大きく打ち寄せる波となって、見る人を作品の中へといざないます。建物や周囲の景色との親和性を大切にして制作されており、障子越しに差し込む光が塩のわずかな凹凸にぶつかり、陰影を生むとともに作品の表情を変えます。

山本さんは妹の死をきっかけに、1996年から清めの意味を持つ塩を作品の素材として使うようになりました。「作品作りは、大切な人との思い出を忘れないための、いわば『忘却にあらがう装置』なんです」と語る山本さん。約30年間、塩を使い続ける中で、無色透明な立方体が光を乱反射して白く輝く姿に引かれていくとともに、溶けて姿を失う不安定な素材に向き合うことは、自分の思い通りにならない「命」と向き合うことに通じると気付いたそうです。山本さんは「自分自身の問題解決のために制作していますが、見てくださった方が人生を振り返るきっかけになればうれしいですね」と話してくれました。塩の町で作品を眺めながら、大切な人との記憶をたどってみませんか。

■宇多津町民の声
村松 享さん
町家一棟貸しの「古街の家」を運営

運営する施設のすぐ近くで作品展示があり、宇多津町が芸術祭の会場であることを身近に感じています。アーティストの方が町に短期間滞在して、地域と交流しながら制作をし、会期中は世界中から人が集まる。その過程で「何か化学反応が起こるのかな」とわくわくしています。

◆関連イベント情報
◯塩サミット
日時:10月5日(日)
場所:ユープラザうたづ

塩業関係者や研究者、名前に「塩」がつく人など、全国から塩に縁のある人々が大集合し、あらゆる角度から、塩にまつわるさまざまな話を思う存分語り尽くします。

■New works
秋会期から公開される新作の一部をご紹介。今しかできない体験を会場で。

◯本島
ジャッガイ・シリブート
ディスパッチ

◯粟島
グエン・チン・ティ
Awashima,Fall

◯伊吹島
ジョンペット・クスウィダナント
反響

◯高見島
小枝繁昭
はなのこえ・こころのいろ2025/除虫菊の家
※詳細は広報紙2~3ページの写真をご覧ください。