くらし しまなみ農業だより

■カンキツ害虫(コアオハナムグリ)
◇コアオハナムグリというカンキツ害虫
5月は島中がカンキツの香りに包まれる季節を迎え、香りに誘われて多くの昆虫がカンキツの花に集まってきます。
花粉や蜜を食べにやってきてカンキツの傷果を発生させるコアオハナムグリという昆虫が最近増えて農家を困らせています。
今回はコアオハナムグリという昆虫について解説します。

(1)コアオハナムグリとはどんな昆虫
コアオハナムグリはコウチュウ目のコガネムシ科の昆虫で、「カナブン」と呼ばれる虫の一種と言えばイメージできると思います。体長が10ミリ前後の緑がかった色のコガネムシです(写真1)。
成虫は5月~9月頃にかけて花の蜜や花粉を求めて色々な植物の花を渡り歩きます。コアオハナムグリは、白い花や蜜・花粉が多い花に集まりやすい、カンキツ類の花の構造が果実となる子房が花中にあるため吸蜜にきた虫が子房を傷つけやすい、ミツバチと異なり鋭い爪があるためひっかき傷が出やすいことからカンキツ類の害虫になっています。
虫に悪気はなくても小さな子房をひっかくため果実の肥大にともない傷も大きくなり食味には影響しませんが外観を損います(写真2)。
植物にとって訪花昆虫は受粉をしてくれる共生生物ですが、柑橘においては果実に傷を付ける悪者として嫌われます。

(2)コアオハナムグリの生態
年1回発生し、成虫~終齢幼虫で土の中で越冬し、4月末~7月頃に土中から出てきた成虫は花の蜜や花粉を餌に養分を蓄え交尾後、土の中に産卵します。幼虫はカブトムシと同様に土の中の腐熟物を餌に育ち、成長の早い個体は9月頃に成虫になります。
越冬明けの成虫の発生とカンキツ類の開花がほぼ同時期となるためカンキツ類の花に多く飛来することもうなずけます。
10月頃に成虫は土中に潜り越冬に入ります。

(3)コアオハナムグリの多発生の原因
では、最近、なぜ被害が多くなったのか原因を考えてみました。(1)暖冬の影響で死亡率が低下した、(2)堆肥などをまく機会が増えたため産卵地が増加した、(3)カンキツ品種が増え開花期間が長く繁殖力が向上した、(4)農薬の効果が低下した、などが考えられます。
気象や品種構成、栽培方法などの変化により発生量が増加したのではないかと考えられますが仮説の域を出ません。

(4)被害防止対策
被害防止対策は、カンキツ農家が行っている開花期の農薬散布が最善策と考えられます。
白色や銀色の反射光を嫌う性質を利用してカンキツ園内の地面にシートを張ると飛来が減るようですが現実的ではありません。
農薬散布を行っても被害が多い原因として、(1)カンキツ園の外から波状的に飛来する、(2)コウチュウ類は大型の昆虫のため農薬の効果が現れにくい、(3)人畜に安全性の高い農薬のため効果の持続期間が短い、(4)カンキツ類の品種が多く開花時期が異なるため適期防除が難しい、など防除効果が上がりにくい原因と考えられます。
コアオハナムグリの農薬による防除効果を向上させるためには、(1)開花2~3分咲き頃に1回目の防除を行い、訪花密度が下がらない時には8分咲頃に2回目の防除を行う(農薬の適期散布)。(2)飛来の時間帯は午前中が多いので農薬散布は午前中に行うとよいようです。
農薬の選択は、JAの柑橘防除暦を参考にしてください。

※詳細は本紙をご覧ください。