- 発行日 :
- 自治体名 : 福岡県古賀市
- 広報紙名 : 広報こが 2026年2月号
■認知症×共生社会
◇認知症は「予防」よりも「備え」だと思っています。
私はよく言います。
地震と同じで認知症になるのは止められない。それなら、なったときに困らないように“準備”をすることが大切だと。
携帯のアラームに「予定」を入れてセットしておくと、時間になったら何をしたら良いか教えてくれます。
ホテルに着いたら入口や部屋のドアの写真を撮る。こうしておけば忘れても大丈夫。
迷子になったときは助けてほしいと誰かに電話する。どこにいるのか聞かれても分からないから、ビデオ通話で周りの景色を写して見せます。するとたちまち、相手に自分の場所が分かり教えてもらえます。
こうした工夫は、認知症に限らず今日から誰もができることです。
◇家族や支える人へお願いがあります。
心配する気持ちはとてもよくわかります。でも、支えるつもりで先回りし過ぎることで、私たちの力を奪ってしまうことがあります。
どうか先回りし過ぎないでください。失敗しながら覚える時間も私たちには必要です。全部やってくれるより、見守ってくれるほうが嬉しいときもあります。できる力を信じてください。
また、認知症と診断されると、記憶力を確認したいのか質問攻めにあいます。
「今日のお昼、何食べた?」と質問しないでください。思い出せない自分に、すごく落ち込んでしまいます。
代わりにこう聞いてください。「今夜、何食べたい?」未来を想像する言葉には希望があります。
記憶はなくなっても、嬉しかった気持ちは残ります。
いつか自分も認知症になるかもしれないと想像してみてください。そのときどう扱われたいか。それが答えだと思います。当事者が前向きになれると家族もきっと楽になります。
◇めざすは、「認知症になっても安心なまち」でなく、「誰もが安心して認知症になれるまち」
認知症になると不安も多いけど、こんなまちだと安心して暮らしていけます。
認知症かどうかで人を分ける必要はありません。
私たちは、みんな同じ社会の一員です。私にも役割があるし、あなたにも役割があります。
小さな「できた」を支え合えるまちは、きっと、どんな災害や困難にも強いまちだと思います。
◇最後に
私は、認知症になっても人生は続くと思っています。
むしろ、工夫しながら生きることで、人の優しさやつながりを今までより深く感じることができました。
どうか一緒に考えてください。
いっしょに支え合ってください。
そして、自分らしく生きられる地域をつくっていきましょう。
小さな「できた」が、明日の力になる。
その一歩から、まちは変わります。
■丹野 智文さん
宮城県在住。2013年自動車販売会社で、売り上げトップの営業として活躍していた39歳のときに若年性認知症と診断。現在は、同社で総務・人事として働くかたわら、若年性認知症当事者として、「当事者が元気になる仕組みづくりや企画」を行うなどの活動を展開。妻と子ども2人の4人家族。
■「だれもが生きやすいまちづくりをめざして」
◇認知症希望大使 丹野 智文さん×田辺市長
司会:高校1年の家庭科の教科書に載っている丹野さんは、学校へ出向いてサポーター養成講座をしていますね。
丹野:主にグループワークをやります。私の症状3つ「人の顔がわからなくなる・物忘れがある・道に迷う」を考慮して『丹野さんと一緒に楽しくディズニーランドに行く計画を立てよう!』と皆で考えるんです。
大人はGPSを活用したり、担当者付きで回ったら?と言いますが、高校生は「上から下まで全員でお揃いの服で行こう」「全員で同じカチューシャ着けよう」と発想が全く違う。”そうやってみんなで考えれば友達が病気になっても障がいがあっても何でもできるね”って授業です。
今は認知症が防げないから”どういう風に生きていくか”ってことの方が大切。だから今スマホを使ってる人は、どの症状が出た時にどのアプリをどう使えばうまくいくかって考えて“備えておく”といいですね。
市長:デジタル技術を暮らしに活用するのはとても大事。ある道具をうまく使うことでできることの幅が広がり、生きやすさにつながりますね。
丹野:例えば、予定は朝のご飯から出かける時間なども全てスマホに教えてもらいます。ものの名前を忘れた時はAIに教えてもらうし、道に迷った時はLINEのビデオ通話ですぐ助けを求めます。忘れても、迷っても困らなくなる時代が来ます。
市長:なるほど。LINEなどのツールも技術が進んでいるので使い方の幅も広がりますね。
司会:古賀市は、認知症サポーター養成講座に力を入れているそうですね。
市長:古賀市職員も全員認知症サポーターです。誰もが自分の生きたいように生きていけるよう、優しい心で配慮し合い、お互いを大切にするまちづくりを進めています。その中で未来をつくる子どもたちに、“認知症を理解してもらおう”と平成24年から10年以上、子どもたちが認知症ジュニアサポーターになる取組もしています。企業や団体と連携して取組を広げていくことも、「まちづくり」を担う我々行政の大事な役割だと思っています。
司会:「生きやすいまちづくり」という視点で考えるとどんな場所が必要でしょう?
市長:当事者同士が話し合う“場”も必要ですし「人と人との交流の“場”では、何か新しい価値が生まれる」これはまちづくりの大事なコンセプトです。公や地域の中でも認知症カフェなどの“場”を積極的に作っていく機会を広げたいと思っています。
丹野:本人が自立して前向きに生活するようになると、一番楽になるのは実は家族なんです。市長や皆さんが、認知症になった時にどういうまちであってほしいのか、視点を変えて考えれば「まちづくり」も変わってくるんじゃないかと思います。
市長:本人がどう生きていきたいのかを主軸にさまざまな取組や施策を考え、輪を広げていくことが大事ですね。
司会:市の包括支援センターの職員の皆さんが本当に一生懸命で、丹野さんの『本人ミーティング(※)』の実演から学んでいました。この思いを包括支援センターだけじゃなく皆で連携できたら素敵だと思いました。
丹野:「市民一人ひとりが安心して認知症になれる古賀市」にしていくことが一番大切だと思います。“市長自身も安心して認知症になれるまち”になったら最高ですよね。
市長:これは認知症だけでなく全てに通じることですね。
丹野:認知症の人が住みやすいまちは障がい者にも高齢者にも住みやすい。だからこそ認知症のことをみんなで考える社会になったらいいなと思っています。これからも是非よろしくお願いします。
※「本人ミーティング」
認知症のある本人が安心して集い、自分の思いや経験・困りごと・これからの暮らしについて語り合う場です。
丹野さんと市長の対談動画はこちら
※詳しくは本紙をご覧ください。
問合せ:福祉課(サンコスモ古賀内)
【電話】092-942-1156
