くらし 特集 誰かが守り、誰かが作っている あなたの暮らしのすぐそばで―(1)
- 1/34
- 次の記事
- 発行日 :
- 自治体名 : 福岡県宮若市
- 広報紙名 : 広報みやわか「宮若生活」 No.232 2025年5月号
◆有害鳥獣による農作物の被害 1,235万円
※令和5年度宮若市の被害額
近年、全国的に問題となっている有害鳥獣による農作物の被害。市においても例外ではなく、特にイノシシやシカなどの出没による被害が深刻化しています。
◆有害鳥獣の捕獲等実績 1,569頭
※令和6年度宮若市猟友会の捕獲頭数
農業や安全な暮らしを守るため、猟友会をはじめとする関係機関と連携しながら、被害防止と生態系保全の両立を目指し、慎重かつ着実な対策を行っています。
私たちの食卓に並ぶお米や野菜。
その裏には、作物や田畑を『守る人』、そして食を『作る人』がいます。
イノシシなどによる鳥獣被害に立ち向かう猟友会の現場と、自然と向き合いながら日々挑戦を続ける若手農家。
あなたのすぐそばで、今日も地域の『食』と『暮らし』を支える人たち。
この特集では、そんな『守る人』と『作る人』たちの姿を、のぞいていきます。
◆森の守り人 猟友会
井ノ口 哲生 INOKUCHI TETSUO
宮若市猟友会 会長
宮若市猟友会会長を約15年間務めている。
鶴田地区在住。狩猟歴は57年。
小・中学生の頃、祖父の狩猟について行ったのが狩猟を始めたきっかけ。
◇駆除するだけじゃない生態系と向き合う猟友会の現場
「猟友会と聞くと、『有害鳥獣を駆除している団体』という、イメージがあるかもしれません。現在は有害鳥獣駆除を主に行っていますが、元々は狩猟が趣味の活動団体なんですよ」。
そう話すのは、宮若市猟友会会長の井ノ口哲生さん。近年日本各地で深刻化している有害鳥獣問題について話を伺いました。
「宮若市は山に囲まれているため、周辺市町と比べると、有害鳥獣の駆除頭数はダントツで多いんです。令和6年度猟友会で捕獲・狩猟したのは、千五百六十九頭でした。その中でも、イノシシが七百六十頭なんですよ。
狩猟には二種類あって、罠猟(箱罠・くくり罠など)と銃猟があります。箱罠には、イノシシ数頭がまとめて入ることもあって、そのほとんどがウリ坊か若いイノシシなんです。イノシシは、一回の出産で大体五頭産みます。寿命は十歳前後で、その間に複数回出産するんです。なので、メスイノシシを捕獲しないことには、頭数は増える一方なんですよ。
ただ、むやみやたらに狩猟すると、生態系を崩す可能性があるので、考えながら狩猟を行っています」。
◇本能で生きる動物たち
「宮若市で言うと農作物の被害はイノシシが一番多いです。イノシシは雑食なので何でも食べるんですよ。野生動物は基本的に本能で生きているため、一度おいしいと思った食べ物に執着心が生まれます。危険を顧みず、電柵やワイヤーメッシュなどをくぐったり、壊したりして侵入するケースも少なくはありませんね。特に、稲や果実の収穫直前が一番被害が多い気がします。春の時期で言うとタケノコなんかは、地上に出る前に掘って食べるんですよ。
皆さんが簡単にできる対策は、まず余った農作物や家庭から出る生ごみを正しく処理することです。これは誰にでもできることだと思います。ポイ捨てごみを拾うことも対策の一つですね。みんなで一丸となって、野生動物に食べさせない努力が必要です。
被害にあった農家の人からはよく、『野生動物が出没しているので、罠を設置してほしい』という相談を受けますね。緊急捕獲が必要なときは、対応可能な会員を向かわせたり、農政課と連携を取ったりしながら対応をしています。
こういった活動の結果、農業被害が軽減した情報や被害総額が減少したことを聞くとうれしいですね」。
◇現在の猟友会とこれからの猟友会
「現在、猟友会は高齢化していて、最初に言ったように、有害鳥獣駆除が主な活動となっています。銃猟を行う会員は、年に二回必ず基本的な銃の操作を兼ねた射撃練習を県立福岡射撃場で行うなど、人的被害を出さないために、私たちも細心の注意を払っています。
狩猟期間中(10月15日から翌年2月15日まで)は野生動物と人間の狩猟本能の勝負を楽しめる期間でもあります。自分で捕った獲物を食するという楽しみもあるので、その魅力もこれから伝えていければと思っています」。
◆宮若市猟友会会員募集(市内在住者のみ)
狩猟をするためには、狩猟免許取得後、狩猟をしたい都道府県への狩猟者登録が必要です。また、ハンター保険への加入などが必要ですが、猟友会に加入すると事務手続きを猟友会が代理で行います。
加入希望者は、お問い合わせください。
問い合わせ:宮若市猟友会事務局
【電話】090・3417・7299(大西)【メール】[email protected]
◆鳥獣害防護柵等補助金
有害鳥獣による農林産物の被害防止のために、防護柵などを購入する場合、その費用の一部を補助します。
申請方法や補助金の交付要件などの詳細は、お問い合わせください。
対象:電気柵、ワイヤーメッシュ柵、防護ネット
補助割合:購入費の2分の1以内
※購入前に申請が必要です。
問い合わせ:本庁農林対策係
【電話】32・0518