くらし 特集 誰かが守り、誰かが作っている あなたの暮らしのすぐそばで―(2)

◆食を作る農業者
篠崎 佐知 × 矢野 智絵
SHINOZAKI SACHI × YANO CHIE
農家(米・アスパラガス)
新規就農者として4年目。宮永地区在住。
以前は福岡市でダイニングバーを経営。
篠崎さんは宮若市出身。
矢野さんは北九州市出身。
『さちとちえのアスパラガス』を、ドリームホープ若宮で販売中。

◇規則正しい暮らしが体を変えた
「若い人にも農業の魅力を知ってほしいですね」。
そう笑顔で語るのは、新規就農者として四年目を迎えた、篠崎佐知さんと矢野智絵さんの二人。かつては一緒に飲食店を営んでいましたが、不規則な生活が続き、体調も崩しがち。三十歳を機に何か新しいことに挑戦したいと思い、農業を始めました。
「農業をやっていく中で、体が元気になったんですよね。二人で飲食店をやっていたときは、不規則な生活だったので、体重が増えていく一方でした。
今では規則正しい生活になったのと、なるべく食品添加物を摂らないようになった影響もあってか、体の軽さが全然違います。農業をやっているからこそ、食べる物には気をつけていて、今は舌が肥えたというか、正常に戻りましたね。
実は、アスパラガスって美容によくて。βカロテン、ビタミンC、ビタミンEといった抗酸化物質を豊富に含み、肌の老化を抑える効果や美肌作りに役立つ栄養素が豊富なんです。医者が好んで食べる野菜とも言われているんですよ」。

◇試行錯誤と終わりなき挑戦
「私たちは、手作りした納豆菌や有機百パーセントの肥料を使って、土壌が良くなるように工夫して作っています。なるべく農薬を使わず栽培していますが、それでも虫がついてしまいます。虫が野菜を食べることは、おいしい証拠でもあり、人に与える害は少ないのですが、商品として出せないので困っています。防虫ネットを使っても、風に乗って隙間から虫が入ってきてしまうこともあって、一週間収穫ができなかったこともありました。
だから、試行錯誤の結果、大きいアスパラガスが採れたときは、うれしいですね。購入者にも喜んでもらえるので、頑張っている甲斐(かい)があります。
今は、ホワイトアスパラガスの栽培にも挑戦をしています。フレンチで使える野菜を作っていきたいので、今後はカブやホワイトニンジンなんかも作ってみたいですね。
アスパラガス以外にも、『二枚米(にまいめ)』というブランド米を栽培しています。しかし、ここでも自然との攻防が繰り広げられているんですよ。山に囲まれているので、電柵を張っていても、イノシシやシカがすり抜けてきて、田んぼを荒らすんです。他にも、カメムシやジャンボタニシなどの被害もあります。いつも、どうやったら被害を防げるか考えていて、今年も新しい対策を試してみようと思っているので、どうなるか楽しみです。
農業は決して楽な仕事ではありませんが、終わりがないところも農業の魅力だと思います。目標を常に持つことができて、次々に挑戦できるのは、やる気にもつながります」。

◇農業って、思ってたより楽しい
「農業って高齢化が進んでいて、後継者不足が深刻なんです。少しずつ若い人も増えてはいるけど、まだまだ足りません。どうすれば農業に興味を持ってくれるのか、二人で話し合った結果、あえて作業着じゃなく、スポーティーな服装で畑に立ったり、明るく楽しそうに作業したりしてみようとなったんです。若い人や女性たちが『ちょっとやってみたいかも』と興味を持ってくれるきっかけになるのでは、と思っています。
自然の中で働くことの心地よさ、作物を育てる喜び、そして人とのつながり。そんな『農業の魅力』を、自分たちらしいスタイルで、これからも明るく伝えていきたいですね」。

国では、次世代を担う農業者を目指す四十九歳以下の人に対し、事前に必要な資金を交付することで、農業への円滑な参入と安定した経営確立を支援しています。

◆就農準備資金
対象者:就農予定時に四十九歳以下で、研修機関で研修を受ける人
補助額:月額十二万五千円
補助期間:最長二年間
交付要件:
・原則一年以上、年間千二百時間以上の研修を受けること
・雇用契約がないこと
・世帯所得が前年度六百万円以下
・傷害保険に加入していることなど

◆経営開始資金
対象者:独立・自営就農を行う四十九歳以下の認定新規就農者
補助額:月額十二万五千円
補助期間:最長三年間
交付要件:
・五年以内に農業で生計が立てられる計画であること
・経営継承者であっても、新規参入者と同等の経営リスクを負うこと
・目標地図に位置付けられている、または農地中間管理機構から農地を借り受けている
・世帯所得が前年度六百万円以下など

問い合わせ:本庁農業振興係
【電話】32・0518