- 発行日 :
- 自治体名 : 福岡県朝倉市
- 広報紙名 : 広報あさくら 第415号(令和7年9月号)
市内の歴史遺産のロマンを追いかけるシリーズ
■三十七.蜷城をめざして鬼木佐太夫宗直(おにきさだいふむねなお)(2)
三奈木黒田家の忠臣鬼木左太夫宗直は、おごり高ぶる黒田一貫(かずつら)の態度が藩主への忠儀、臣下への労(いたわ)りに反するものであったため言動を諫(いさ)めます。しかし、宗直の言葉は聞き入れられず、一貫は甘言をもって近づくものに囲まれ、宗直は遠ざけられました。宗直は一命をもって主君を諫める他に道無しと決意します。家族を呼び寄せ事情を述べると、皆も覚悟を共にしました。
宗直は、子息2人、養女、奥方の命を絶つと、最後に自らの腹を割って果てました。傍らには主君への諫言状(かんげんじょう)が残っていました。その夜、一貫が寝所に入ると、馬屋からいななきが聞こえます。何事があったのかと人を呼ぶと、部屋の隅に宗直が控えていました。一貫が「何用か」と正すと、宗直は「殿、行いを正してくだされ」と言い、一貫は宗直の迫力に押され「わかった」と応えます。宗直はさらに「今の言に偽りはありませんか」と念を押します。一貫も「いささかも偽りなどない」と応えると、いつの間にか宗直は退出していました。主君を案じる宗直の熱い思いが一貫を動かした瞬間でした。
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