くらし AIを活用した新世代の公共交通 オンデマンドバス「のるーと」(3)

(Special Interview)
「のるーと」が描く志免町の交通未来図

新時代の公共交通として親しまれている「のるーと」。
この事業を展開するネクスト・モビリティ株式会社の中西さんと野村さん、西日本鉄道株式会社の岩﨑さんに話を伺いました。

西日本鉄道株式会社
自動車事業本部未来モビリティ部地域交通担当課長
岩﨑大介さん

ネクスト・モビリティ株式会社
営業グループジェネラルマネージャー
中西友成さん

ネクスト・モビリティ株式会社
運行支援グループアシスタントマネージャー
野村拓矢さん

■「のるーと」が生まれたきっかけは?
(中西)従来の公共交通機関では、利用者のニーズに対応しづらくなってきていたことがAIオンデマンドバスが誕生した背景にあります。高齢の方が増えたり、地域によっては子育て中の方が増えたり、移動する時間、場所もまた多様化、分散化しています。そのような中でも、公共交通の持続性と利便性を担保したいという想いから事業が生まれました。

(岩﨑)高齢の方からは、もっと外出したいけれど、交通機関が不便だから出かけられないというお声も上がっていました。とはいえ、従来の路線バスだと本数や通行できる場所に限界がありジレンマがありましたね。

(野村)こうしたニーズに応えるものが「のるーと」に活用されている交通DXの技術です。決まった運行ルートや時間で走る路線バスや福祉巡回バスとは異なり、AIの技術で予約状況に合わせたルートで運行するので、多様で分散したニーズとマッチしているんですよね。

(岩﨑)それに「のるーと」は小型バスですので、住宅街の狭い道にも入っていけますし、大型二種免許が不要な分、運転手の確保もしやすくなります。

■志免町への導入について教えてください
(野村)志免町への導入は、2020年頃にお話をいただいたのがきっかけですね。まず役場の方が先行していたアイランドシティへ視察に来られて、関心を持っていただきました。

(中西)23年に協定を正式に結び、運行開始は24年3月。その際には地元のタクシー会社さんや地域の方々にもご協力いただきました。道の混雑状況や細かな情報は、地元の方が詳しいですからね。

(野村)ただ、運行開始当初はAIの精度向上が必要な場合があり…。時間に余裕を持たせ過ぎたり、逆に遅れたり。でも運行データの蓄積によって、AIの精度も向上してきました。利用者の方からは「移動の自由度が上がった」という喜びの声を多くいただいています。一方で「予約が取りにくい」「待ち時間が長い」というご意見も。今年度の予算で2台増車していただくので、そういった課題を少しずつ解決していけると思います。

■志免町での「のるーと」の利用状況は?
(中西)最初は1日40人ほどだった利用者数も、多い日には100人を超えるようになりました。高齢の方だけでなく、小学生や子育て世代の方など、幅広い世代にご利用いただけているのが本当にうれしいです。

(野村)志免町の傾向としては、志免町公式LINEから予約を取っていただく方が多いですね。全国でも初めてキャッシュレス決済に対応していただきました。今後は予約状況や待ち時間の課題をクリアしつつ、いずれは商業施設や医療機関とも連携して、より住みやすい志免町になるお手伝いができればうれしいですね。

(岩﨑)最終的なゴールは、公共交通全体の利便性を高めること。その実現に向けて、今後も努力を続けていきます。