くらし 【人権教育No.339】ともに生きる

■「足るを知るということ」
『本当に貧しい人とは、どんなにたくさん持っていても、もっと欲しいと思い、満足できない人のことです』ウルグアイの元大統領ホセ・ムヒカさんは、2012年にブラジルのリオデジャネイロで開かれた「国連持続可能な開発会議」のスピーチで、このように訴えかけました。彼は続けて、次のように問いかけます。
『私たちは本当に幸せになっているのでしょうか。次々と新しいものを欲しがって、買っては捨てるという生活を繰り返しています。もし世界中のすべての人が車を何台も持ち、たくさんの服を買い続けたら、地球が悲鳴をあげてしまいます。幸せとは、人を愛すること、みんなと仲良くすること、こどもたちを育てること、友だちを作ること、困っている人を助けること、そして必要最低限の物を持つことではないでしょうか』
彼が伝えたかったのは「お金や物だけが豊かさではない」ということです。ムヒカさん自身も大統領でありながら贅沢をせず、給料の多くを寄付しました。「世界で最も貧しい大統領」と呼ばれましたが、彼にとって、「貧しい」とは、尽きることのない物欲に振り回される生き方のことでした。
当時の私は、日々の忙しさに追われて、心に余裕がありませんでした。そんなときにムヒカさんの言葉に出会い、立ち止まって自分の生き方を考えるきっかけをもらいました。幸せは、この手の中にある大切な人や日常の中に見つかるのだと、優しく気づかせてくれました。

社会教育指導員 宮下法子(みやしたのりこ)