くらし 《地域特集》kon-ne 壱岐

■祖父母の思い継ぎ鬼凧を広めたい
壱岐市芦辺町 鬼凧(おんだこ)工房 平尾
斉藤(さいとう)あゆみさん

長崎県の伝統的工芸品「壱岐鬼凧」。祖父母が半世紀以上にわたり積み重ねてきた技術を受け継ぎ、たこ作りに励む女性がいます。
鬼凧は若武者「百合若大臣(ゆりわかだいじん)」と鬼の首領「悪毒王(あくどうおう)」の格闘のさまを勇壮に描いたもので、家内安全や無病息災の魔よけとして民家や店舗に飾られています。市内のたこ職人は減り、現在は斉藤あゆみさんと祖母の平尾フクヨさんの2人だけになりました。
中学生まで放課後は祖父母の家や工房で過ごしていた斉藤さん。傍らには当たり前のようにたこがありました。高校卒業後、島を離れ福岡市へ。専門学校に進み、アルバイトを経て、民間企業に就職しました。たこ作りに関わるようになったのは2018年に祖父の明丈(みょうじょう)さんが体調を崩したことがきっかけでした。休日に様子を見に島に戻るうち、たこ作りを手伝い始め、「何十年も2人で作っていたんだな」と時間の重みを感じ、「伝統を途絶えさせたくない」と思うように。体調が悪化し思いどおりに作業ができなくなった祖父がこぼした「たこをしまいにしよう」という言葉に悲しみが込み上げ、「本当はおじいちゃんも続けたいはず。私がやるしかないと思った」と語ります。
その後、福岡と壱岐を行き来し、1年近くたこ作りを勉強しました。そんな斉藤さんをうれしそうに見守っていた明丈さんは2019年に他界。斉藤さんは同じ年に継承の決意を固めてUターンし、フクヨさんと共同でたこを制作しています。
竹を加工した骨組みに和紙を張り、墨で描かれるたこの出来具合は「百合若大臣の目で決まる」と明丈さんから言われてきたため、墨入れの最後に慎重に目を描きます。絵付けは赤、橙、黄、緑の4色の食紅を使用。これも祖父母が決めた配色を引き継いでいます。かつて明丈さんが墨入れした鬼凧には力強さが漂い「おじいちゃんに近づきたい」との思いを胸に、制作に励んでいます。たこは高さ30センチから2・5メートルまでの8種類。島内外からお祝いごとなどで注文を受けているほか、最近ではSNSでの発信やグッズ販売などを通して海外の方にも広まってきているそうです。
2024年10月に長女を授かり、子育てとたこ作りを両立させる日々。以前のように工房に寝泊まりはできませんが「子どもの昼寝時間などをたこ作りに充てています」とほほ笑みます。
9月14日に開幕する「ながさきピース文化祭2025」に参加予定で、たこの絵付け体験などのイベントを計画しているそうです。「島外の人にも来てもらい、鬼凧をさらに広めたい」と意気込んでいます。

▽猿岩
黒崎半島の先端にある高さ45メートルの奇岩。「そっぽを向いたサル」にそっくりで、観光客にも人気の撮影スポットです。岩越しに見える美しい夕日も絶景。

▽壱岐神楽(かぐら)
700年の歴史をもつとされ、国指定重要無形文化財に指定されています。壱岐の神社に奉職する神職にしか舞うことを許されず、口頭でのみ継承。8月と12月に奏される大大神楽(だいだいかぐら)では、12人以上が集まり、7~8時間をかけて奉納されます。

◆ボリューム満点の壱州豆腐
▽中村たんぱく
1等級の国産大豆を使い、ミネラル豊富な海水にがりで作る「壱州豆腐」は大きく、1丁が800グラムから900グラムにおよび、大豆本来の味が濃く、甘みもあります。硬さも特徴ですが、みそ汁やすき焼きに入れたりレンジで温めれば、ふわふわになるそうです。

場所:壱岐市石田町本村触118-7
【電話】0920-44-5310
※販売店舗は壱岐市内のスーパーなど。公式ウェブサイトでも販売

◆もちもち新食感のパスタ麺
▽壱岐オリーブ園
オリーブの葉をパウダー化し、丁寧に練り込んだ「オリーブ抹茶のパスタ」。もちもちした食感が特徴で、葉の香りが食欲をそそります。「パスタの新しい領域を感じさせてくれる」などの評価を受け、今年2月、ジャパンフードセレクションの第84回食品・飲料部門グランプリに輝きました。

場所:壱岐市郷ノ浦町片原触1190
営業:9時~17時
※8月13日~16日、12月31日~1月4日を除く
※「オリーブ抹茶のパスタ」は公式ウェブサイトなどで販売
【電話】0920-47-6737

◆[表紙のコト] 壱岐市立一支国(いきこく)博物館
今年3月に開館15周年を迎えた一支国博物館は、中国の史書「魏志倭人伝」に記された「一支国」の王都とされる国指定特別史跡「原(はる)の辻(つじ)遺跡」の出土品をはじめ弥生時代や古墳時代の歴史資料などを展示しています。原の辻の様子を再現した大規模ジオラマ模型や、広大な平野と水平線を見渡せる展望室なども備えています。「壱岐の歴史を集約した施設。展示室には土器を持ち上げて重さを体験するコーナーもあり、子どもたちが歴史を直感で学べます。ぜひご来館ください(須藤館長)」

場所:壱岐市芦辺町深江鶴亀触515-1
営業:8時45分~17時30分
※月曜(月曜が祝日の場合は翌日)、12月29日~31日は休館
【電話】0920-45-2731

◆地域のニューストピックを紹介
▽「Jブルークレジット」認証
今年3月、壱岐市磯焼け対策協議会が取り組んできた海中の海藻類が育たなくなる磯焼けの対策で、回復した藻場が温室効果ガスを吸収したとして、国認可のジャパンブルーエコノミー技術研究組合から「Jブルークレジット」の認証を受けました。2023年度に続いての認証となり、今後もさらなる対策の拡充に取り組んでいきます。