- 発行日 :
- 自治体名 : 長崎県
- 広報紙名 : つたえる県ながさき 第113号(令和7年9月号)
県では、基幹産業の一つである水産業の発展を技術的な側面から支援するため、総合水産試験場でさまざまな調査や試験研究に取り組んでいます。
■総合水産試験場の取り組み
総合水産試験場では、水産資源の持続的な利用や養殖業の振興、漁場環境の保全、水産加工業の育成・強化など、現場のニーズに応じたさまざまな技術開発に取り組んでいます。研究成果は、ウェブサイトに掲載しているほか、現地指導や研修会を通して、現場への普及と確実な定着を目指しています。
▽資源を増やし、効率的な操業を実現する
漁具・漁法の開発・改良や水産資源の維持増大を図るための基礎調査、種苗放流手法の開発などを行っています。
▽資源増加と養殖を支える種苗づくり
放流や養殖に用いる魚や貝、海藻などの種苗生産技術を開発するほか、温暖化に対応した魚種・品種の研究を行っています。
▽安定した漁場環境と養殖技術をつくる
近年、大きな被害をもたらしている赤潮の発生原因と被害を軽減するための対策の研究や収益性の高い養殖技術の開発を行っています。
▽水産加工業の発展を支える
多様化するニーズに対応した水産加工・品質保持技術の開発や水産加工業者が行う製品の開発・改良を技術的に支援しています。
■調査・研究の主な成果 ~全雄トラフグの開発~
全国第1位の生産量を誇る養殖トラフグのさらなる競争力向上のため、高級食材である白子を持つ雄のトラフグだけを「代理親魚技法※」により効率的に生産する技術を平成27年度に世界で初めて開発し、平成30年度から県内養殖業者と連携した養殖試験を開始しました。これまで約51万尾の「全雄トラフグ」を市場に出荷しており、昨年度出荷された全雄トラフグは、通常の養殖トラフグよりも約1割高い価格で取引され、養殖業者の所得向上に貢献しています。
※生殖細胞を別種・別個体の魚に移植して卵や精子を生産する技法
■大学との連携
総合水産試験場では、漁業者が海の状況を把握し、効率的な操業や赤潮対策などを実施できるように、海の状態を予測するためのさまざまな取り組みを行っています。
▽赤潮の移動を予測
「赤潮」とは、植物プランクトンが大量発生し、海水の色が変わる現象で、近年、県内各地で赤潮による養殖魚のへい死※など大きな被害が発生しています。
これまで赤潮の原因となるプランクトンは、いつ、どこへ、どのように移動・拡散するのかが分かりませんでした。そこで、長崎大学との共同研究により、約7日先までの有害プランクトンの動きを予測する「赤潮移流予測モデル」の開発に取り組んでいます。この予測モデルはまだ試行段階ではありますが、養殖業者が赤潮対策を行うための情報として活用されています。
※へい死:環境の変化や病気などにより突然死ぬこと
▽海の状況を予測
漁業者が、魚が取れる場所を把握して効率的に操業ができるように、漁業者・大学・民間企業と連携して、7日先までの海の状況(潮流、水温、塩分)を予測できる「海の天気予報」を開発したことで、船の燃料や漁具などの消費を抑えることができ、漁業者の経営安定につながっています。また、さらなる精度向上に向け、現在も改善に取り組んでいます。
■民間との連携
県内の水産加工業者が行う新製品の開発や既存品の改良を支援するため、小型レトルト機や真空冷却カッターなどの機器を備えたオープンラボで、水産加工業者に対して技術的な助言などを行っています。
近年では、手軽にすぐ食べられるレトルト商品などの製品開発の相談が増加し、オープンラボの取り組みが加工業者の商品化につながっているほか、魚を加工する上で重要な要素であるたんぱく質の特性などを分析し、製品開発に応用するなど水産加工品の付加価値向上を技術面から支えています。
▽オープンラボで開発された商品例
・鯛のマリネージュ
・燻しいりこ サクっ!
・諫早湾芝海老カレー
■第20回ながさき水産科学フェアを開催
海にまつわる科学に親しんでもらうため、国や大学と共同で、海の生き物のタッチプールや研究者によるトークイベントなどを開催します。
この機会に、総合水産試験場の活動に触れてみませんか?
日時:11月2日(日)
場所:長崎県総合水産試験場(長崎市多以良町)
※鮮魚や水産加工品をお得に購入できる「さかな祭り」も長崎魚市場(長崎市京泊)で同時開催します(会場間シャトルバスも運行)
※詳しくは、今後ウェブサイトに掲載します
問合せ:県の総合水産試験場
【電話】095-850-6293