- 発行日 :
- 自治体名 : 長崎県
- 広報紙名 : つたえる県ながさき 第116号(令和7年12月号)
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◆株式会社山口Farm(五島市)
代表取締役
山口 伸太郎(やまぐち しんたろう)さん
◇「農業はかっこよくて面白い」五島牛の繁殖・肥育・販売を一貫経営
家業の農業が大嫌いだったと振り返る山口さん。自分のミスで子牛を死なせてしまったことをきっかけに、子牛を手塩に育てる中で畜産業に没頭しました。ブランド牛「五島牛」の知名度や流通を拡大しようと、自ら牛を育て、販路を広げる一貫経営をスタート。さらに地元・山内地区に精肉店を、五島の市街地にレストランを開業。五島牛を活気づける取り組みが注目を集めています。
父が牛の繁殖、祖父母が施設園芸を営む兼業農家で育ちました。小学生の頃から牛の世話などを手伝わされ、次第に農業が嫌いになりました。父の希望で諫早市の県立農業大学校に進みましたが、卒業後はトラック運転手として働きました。
転機は27歳の時。父の意向でUターンし、JAごとうに就職しましたが、父が病を患い島外に入院したため、渋々兼業で農業に携わることになりました。
初めてお産に立ち会い子牛が産まれた夜、父の「子牛が初乳を飲むところを確認しておけよ」とのアドバイスを忘れ寝入ってしまい、子牛を死なせてしまいました。この大きな喪失感と後悔から、精魂込めて子牛を育てようと決意。日々、試行錯誤しながら育てた結果、子牛が競りで高い評価を受け、育てる面白さを実感しました。2017年にJAを退職して就農。4年後に「山口Farm」を立ち上げました。
五島牛の流通量が少ない一因は、離島は生産コストが高く、個人の肥育農家が育ちにくいことにあるといわれています。そこで、繁殖・肥育・販売の一貫経営に挑戦しようと、2024年から肥育に参入。繁殖牛53頭に加え、肥育牛30頭も育てています。
今年4月には、五島市街地に五島の旬な山海の幸が味わえるレストラン「Restaurant城-JO-」を、7月には、牛舎近くに精肉店「やまぐちファームのお肉屋さん」を開業。子どもから大人まで気軽に集まれる場所にしたい、地元を盛り上げたいという思いを込めて、精肉店にはバーベキュー場とスケートボード場を併設しました。
子どもの頃は「農業はダサい、かっこ悪い、汚い」と思っていました。しかし、息子たちは私たち夫婦が奮闘する姿を見て、誇りに思ってくれており、牛の世話も積極的に手伝ってくれます。五島牛の流通量を増やすためには仲間が必要です。将来を見据え、子どもや若者たちに農業のやりがいを伝えていきたいです。
