くらし 輝く島原人 THE SCENE Vol.98 島原に生きる

「人生の達人」
前田孝弘(まえだたかひろ)さん(72)
昭和28年、弁天町に生まれる。地元高校を卒業後、家業の山口屋染物店に従事。20歳で四代目として店主を引き継ぎ、現在に至る。
明治43年から100年以上続く老舗染物店で、湧水で染物をさらすなど、島原の恵みを生かした伝統的な技法を受け継いでいる。島原らしさをモチーフにデザインした「島原てぬぐいてんげ堂」は島原スペシャルクオリティに認定。
家業に勤しむ傍ら、弁天町自治会(町内会)会長、霊丘地区よか活動委員会委員長も長年務め、地域活動をはじめ、子どもの体験活動などを通じて地域コミュニティの推進にも取り組んでいる。弁天町在住。

■湧水とともに百年継承手染めへのこだわり
弁天町で百年以上続く山口屋染物店。その佇まいは湧水の恵みと共に歩んできた歴史を物語っています。近くに流れる湧水を源とする流れ穏やかな音無川で染物をさらすなど、島原の恵みを生かした伝統的な技法が受け継がれています。
「小学生の頃から弟と一緒に手伝いをしていました。中学生の頃にはひと通り仕事を覚えて、その後は注文取りや配達、集金など経営的なことも学び、二十歳で父から店を引き継ぐことになりました。よそに出たいという気持ちもありましたが、父は私の性格を分かっていて、出したら帰ってこないと思ったのか、その辺のやり方もうまかったんでしょうね。」と、朗らかな笑顔で語るのは山口屋染物店の店主、前田孝弘さんです。
「昔は島原にも多くの染物店がありましたが、時代の流れで需要が減り、今では島原半島で数軒になりました。手ぬぐいなど数をこなす商品は型染めをしますが、のぼりや旗、のれん、法被などの注文品は手染めで仕上げます。手染めへのこだわりが現在まで仕事が残ってきたのだと思います。せっかくお客様のおあつらえで作らせてもらうものなので、染めむらがないように手間はかかりますが二度染めをして仕上がりに責任をもって作業をしています。」と、仕事に対する信念を語ります。

◇霊丘地区よか活動
前田さんは町内会長のほか、霊丘地区よか活動委員会の代表を長年務めるなど、地域活動にも取り組んでいます。
「よか活動は、学校週5日制の実施に伴い、土曜日に子どもたちがいろいろな体験をできる場を地域で作ろうということで平成10年から始めました。当時、第二小学校のPTA会長として立ち上げから関わっています。内容は年によって変わりますが、今年度は将棋、オセロ、茶道、料理、ペタンク、絵手紙、ギター、バイオリン、人形劇などのサークルに約50人の子どもたちが参加しています。ここでの経験が将来何かの役に立つことがあると思います。体験活動や異学年との交流、地域とのふれあいの場として今後も続けていければと思っています。」と、地域の子どもたちへの思いを語ります。
若い頃はヨットやスキーを楽しむなどアウトドア派の前田さん。最近はソロキャンプを楽しんでいるそうです。「子どもが小さい頃はよく家族キャンプに出掛けていました。ソロキャンプは5年ほど前から年に3回ほど。道具も少なくて済み、身軽さが魅力です。計画を立てるところからワクワクします。また、夫婦で参加している島原不知火連での阿波踊りも30年を迎えました。これからも人生を楽しみながら過ごしていければいいですね。」と、笑顔で語っていただきました。