- 発行日 :
- 自治体名 : 長崎県大村市
- 広報紙名 : 広報おおむら 2025年12月号(No.1556)
本市では、障がいがある人もない人も、ともに支え合い安心して生活できるまちを目指しています。今回は「聴覚障がい」のことを紹介します。
◆手話は命
◇長崎県ろうあ協会大村支部 支部長 荒木 宏彦さん
高熱を下げるために打った注射が原因で聴覚を失う。県聴覚障がい者情報センターなどでの勤務を経て、現在はミライon図書館で働きながら、長崎県ろうあ協会会長も務める。
・好きな手話…命
差別されても、手話は排除できない。私たちにとって、手話はまさに命なんです。
荒木さんが聴覚を失ったのは2歳のとき。物心ついたときにはすでに耳は聞こえない状態で、幼稚部からろう学校に通い始めました。
学校には自分と同じような子どもが200人くらいました。当時は聴覚障がいに対する理解が全くなく、差別意識も強かった。登下校中はいじめられる日々でした。親の転勤で北海道に住んでいた時期もありましたが、そこでも全く同じ。優生思想(障がいの有無などを基準に人に優劣をつけること)が強い時代でした。
補聴器をつけていましたが、音は聞こえても言葉の意味がわからない。そのため、「口話(こうわ)」(ろう者が表現したい言葉を口の形と音声で表す技術)の訓練をしました。これがとても難しく、30人のクラスで上手にできるのは2人くらい。声は出せても言葉があいまいなので、とても大変でした。
当時と比べると、世の中もずいぶん変わりましたね。ドラマやCMにも字幕がつくようになり、音声を文字に起こすアプリが普及し、聴覚障がい者とのコミュニケーションも便利になりました。障がいのあるなしにかかわらず対等な共生社会になりました。大村市では、手話の講習会が50年以上続いています。県下で初めて手話言語条例が制定されたのも大村でした。
私たちのことを「かわいそう」だと思わないでほしい。不幸ではなく不便です。皆さんが母国語を使うように、私は手話を使う。外国語のように言葉が違うだけなんです。サポートが必要な場面もありますが、ともに活動したいと思ってくれたら嬉しいです。
◆聴覚障がいとは
音や声を聞く能力に障がいがある状態を指します。
先天性によるものと後天性によるものがあり、聞こえの程度には個人差があります。
・ろう者…先天性の障がいなどで音声言語を習得する前に聴覚障がいになった人。
・中途失聴者…音声言語を習得した後、後天性の障がいで聴覚障がいになった人。手話を使わないコミュニケーションをする人も多い。
・難聴者…手話や筆談ではなく、残存する聴覚を使いコミュニケーションする人。
◆大村市手話言語条例
全ての市民が共生する地域社会の実現を目指し、平成30年1月施行。「手話は言語である」という認識に基づき、手話への理解や普及促進に関する基本理念、市・事業者・市民の役割などを定めています。
◆手話は見る言語
◇手話通訳相談員 松下妙子さん・松下宏美さん
・好きな手話…I love you
この動作だけで意味が伝わるところが手話らしくていいですよね。
耳が聞こえない人(ろうあ者)と聞こえる人をつなぐ手話通訳者。本市で働くお二人も、最初は手話の講習会からスタートしました。
妙子さん:とにかく手話が楽しい!つらいことや大変なことがあっても、当時からこの気持ちは変わりません。手話はただの身振りではなく、「見る言語」なんです。
宏美さん:手話がすごいのは、二つの動作を同時に表現できる「同時性」があること。そして大切なのは、ただ手話を覚えるだけではなく、ろうあ者の文化や背景を理解し、伝えようとする気持ちが大事。ろうあ者と話すことが一番勉強になるし、財産になります。
妙子さん:通訳の途中でろうあ者から間違いを指摘されることもしばしば。でも、間違っていても話の流れは伝わっているんです。
宏美さん:理想は見ていて自然と内容が入ってくる手話ができることだと思います。
妙子さん:私たちは意識しなくても勝手に音が情報として入ってきますが、彼らはそうじゃない。だから、私は聞こえたものを極力全部伝えたいと思っています。
宏美さん:音声情報がない世界で育った彼らは、自然と入ってくる情報が圧倒的に少なく、知識量もさまざま。だから、簡単な言葉に置き換えたり、手話以外にも筆記や図などあらゆる手段を使って伝えます。
妙子さん:日本語独特のあいまいな表現は手話で伝えるのが難しいですね。イベントなどで通訳をするときも、自分が内容を理解しないと伝えられないので、主催者から資料をいただいて事前に読み込み、本番に臨みます。大村は耳が聞こえない人への理解が高いまちだと感じます。私たちの役割は、聞こえない人と聞こえる人の橋渡し。私たちがいてくれてよかった、と言われるとやりがいを感じます。彼らは聞こえないから喋れない、というわけではありません。手話ができなくてもいいので、勇気を出して彼らとのコミュニケーションを楽しんでほしいです。
◆遠隔手話通訳サービス
市の関係機関でタブレット端末やご自身のスマートフォンなどを活用して手話通訳を利用できます。通訳者が手配できない場合にご利用ください。
※対象施設は市ホームぺージをご確認ください。
◆手話通訳相談員
本市の「手話通訳相談員」は専任手話通訳者とろうあ者相談員の業務を兼ねており、依頼に応じた手話通訳者派遣のコーディネートのほか、市役所での手続きや病院受診などで耳が聞こえない人のサポート、窓口での相談対応も行います。
配置窓口:福祉総務課(本庁)・障がい福祉課(プラットおおむら)
◆市政情報番組での手話通訳
おおむらケーブルテレビで放送している「市長定例記者会見」や「おおむらシティナビ」には手話通訳を導入しています(YouTubeでも配信)。
◆イベントなどでの同時手話通訳
イベントや講演会での同時手話通訳を行います。通訳者は手話が見えやすいように、黒などの濃い色の服を着ています。
