文化 南島原の考古学 火を受けた台石(だいいし)~出口(でぐち)遺跡(深江町)~

私たちが何か道具を使って作業をする時、その道具の先にもう一つ道具が必要になることがあります。例えば包丁で肉や野菜を切るときのまな板や、ノートに字を書くときの下敷きなど。人目を引くことは少ないけれど、なくては困る、今回はそんな一見地味に見えて重要な道具、「台石」にスポットをあててみます。
台石は縄文時代に一般的な石器で、砂岩や安山岩などの厚みのある板石を素材としていて、木の実を割る、石器をつくる、土器づくりで粘土をこねるといったいろいろな作業の作業台として使われました。そのため、傷がついたりすり減っていたり、作業の痕跡が残っていることもしばしばです。
出口遺跡は、縄文時代後・晩期(約3,000年前)の遺跡ですが、そこから発見された台石はこれまで各地の遺跡から出土している台石とは少し異なるものでした。
厚さ6センチほどありますが、側面はぐるりと一周上半分が黒くなっています。上面には大きなハガレがいくつもみられ、どうやら作業による傷ではないようです。黒ずみは煤(すす)の付着であり、ハガレは熱を受けたことで表面がはじけ割れた痕跡と判断されます。このことから、下半分を地面に埋め、火の中で使われていたことが想像できます。おそらくは炉の中心に据えられていたのでしょう。煮炊きの際に調理用の土器が倒れないよう安定させるには、重くて平べったいこの台石がもってこいの、そしてなくてはならない道具であったに違いありません。
出口遺跡の台石に学ぶ、文字どおり盤石の構え。何事も足元から固めてどっしりと!

■10月~11月の小企画
日時:10月1日(水)~11月30日(日)
※休館日…火曜日 午前9時~午後5時(入館は午後4時30分まで)
場所:深江埋蔵文化財・噴火災害資料館
料金:一般…200円/高校生…150円/中学生以下…無料
※団体割引あり
※企画展は入館料のみでご覧いただけます。

問合せ:文化財課(南有馬庁舎)
【電話】73-6705