- 発行日 :
- 自治体名 : 熊本県宇城市
- 広報紙名 : 広報うき ウキカラ 令和7年5月号
本田博通(ひろみち)地域人権教育指導員が学校で働いていた経験などから「じんけん」の今をお伝えします
■続・子どもの目線
「せきについたらAちゃんがくさいてゆて、Bちゃんにはなをつまわれて、かなしかたです」
小学2年生。ゆうじくんに向けられる「くさい」という言葉に私は考える時間をつくりました。「くさいと言うのがだめだと思う。でも、ゆうじくんがばかとかあほとか言うから、言い返したと思う。おたがいにあやまったらいい」。そんな意見が続く中、一人の女の子が手を挙げました。
「みんながゆうじくんをすきじゃないから、そういって、きずつかせているんじゃないかな。わたしもされて、とてもきずついたことがある。そのままにして良いのかな。ゆうじくん、とってもきずついて。そうだよね先生。だからルールをつくってほしい、先生」
それは、ゆうじくんの訴えを聞き流していた担任の姿を突く言葉でした。私は彼にそして子どもたちに謝りました。「ゆうじくんをいっぱい叱って、そして叱るだけで先生は冷たかった。それを見て、みんながそんな気持ちになってしまったんだと思う」そして、「〝自分とゆうじくん〟や〝自分の中でもやもやしていること〟を話してみないか」と促しました。
間をおいて、えりなさんが手を挙げました。「駅で上級生が屋根に石を投げよったけんが、『でけんばい』と言うたら、『よかった、ぼけ。おまえんち、くせえ』と言われて悲しかった」と語り出し、それに続くように他の子も話し始めました。
そして次の日、えりなさんはこんな日記を書いて来ました。「わたしは、いえで思いました。わたしはもうこのとこから、きえたほうがいいと思いました。だけど、しんゆうのさなえちゃんたちに元気づけられました。『えりなちゃん、これからもいっしょに生きていこうよ』と言われました。わたしはこんな友だちがいてよかったなあと思いました。本当にかんしゃしています」
担任の思いを超え、子どもたちは出会った問題を自ら解決していきました。教えていた自分が、子どもたちから教わる。そのときの学びが今も私の中に息づいています。
※「」内は原文ママ
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