くらし [人権(じんけん)]人にやさしいまちの実現に向けて

~互いの人権を尊重し、支え合うことから~

(1)水俣病とは?
水俣病の発生が熊本で公式に確認されて、今年5月で69年になります。水俣病とは、工場排水中のメチル水銀に汚染された魚介類を、長い間大量に食べたことが原因となって発生した中毒症による公害病です。主な症状として、両手足の感覚障がいや視覚・聴覚障がい、運動失調等があります。妊娠している母親の体内に入ったメチル水銀が、胎盤を通して胎児へ取り込まれたことにより発症した胎児性水俣病も発生しています。

(2)病気や地域に対しての偏見や差別
水俣病の原因がまだはっきりしなかった頃、病気が伝染すると誤解され、患者やその家族は地域の付き合いを断られることもありました。また、患者やその家族が地元の原因企業と対立するものとして見られ、偏見や差別を受けたり、補償金による中傷やねたみを招いたりすることで地域住民の絆も損なわれました。地域外においては、水俣出身であるというだけで多くの人たちが結婚や就職を断られたり、水俣の産品が売れなかったりするなどの差別が起き、地域全体を苦しめました。(「人権研修テキスト(熊本県)から」)

(3)水俣病について正しく学びましょう
現在、水俣の海は他の海と変わらぬ環境となり、住民の間では「もやい直し」といわれる「人と人との絆」を繋ぎ直す様々な取組が行われています。しかし、多くの人が健康被害に苦しみ、被害者や地域に対する偏見や差別は完全には解消されていません。
今年3月、県内では、自治体が水俣病に対する理解不足や軽率な判断により、「…水俣病などの感染症…」と、誤って表記された配布物を全世帯に配布した問題が発生しました。こうした偏見や差別の解消のためには、水俣病について正しく理解するとともに、被害者の立場に立って考え、行動することが大切です。

水俣病の問題は、特定の地域だけの問題ではなく、科学技術や経済的豊かさの恩恵を受けてきた社会全体に関わる問題です。私たちは今後とも、この問題を自分自身のこととして受け止め、命や健康、身の回りの環境の大切さについて考えていきたいものです。

問合せ:教育委員会 地域人権教育指導員
【電話】0967-62-0227